ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

すべてのドアを鎖せ ライリー・セイガー

 ライリー・セイガーは最近ベストセラーを連発している人気作家で、翻訳が出るのを待っていたのよね。読んでみると期待を裏切らない良作でとても面白かった。これはおすすめ。

 あとがきによれば作者はこの作品を、敢えて近頃流行りの"信頼できない語り手"のミステリーにはしないと決めて書いたそうで、そのためヒロインに素直に共感できて、彼女のことを応援しながら読み進められた。最近はヒロインがアル中だったり、ビッチだったり、サイコパスだったりするガール・ミステリーが多いから、こういうまっとうなキャラクターが主人公だと却って新鮮だな。オカルトめいたところのあるホラー風味のサスペンスだけど、そんなにおどろおどろしい感じではなく、ハラハラドキドキの展開で読ませるスピード感のあるストーリーが良かった。

 ヒロインは、リストラで仕事をクビになったその日に同棲中のボーイフレンドの浮気が発覚。一緒に住むのは耐えられないので彼の家から出ていくことに。仕事も恋人も失って住むところもないという人生どん底状態で、ある求人広告を見つけ藁にすがる思いで応募する。それはお金持ちばかりが住んでいる超高級アパートメントでオーナーが留守の間、部屋番として住むだけで高額の報酬がもらえるという夢のような仕事。面接に行くと、来客禁止、外泊禁止、他の住民のことを詮索しない、SNSにアパートの情報を書くな・・等、厳しい決まりを告げられる。何だか胡散臭いと思いつつ、こんな豪華な部屋に無料で住めて報酬までもらえるならと承諾する。ドアマンは親切だし、同じように部屋番として住んでいる女性とも友達になれたし、その上お隣にはハンサムな独身の外科医が住んでいて、最初のうちは幸運を喜んでいたけれど、友達になった女性が突然失踪したり、奇妙なことが起こり始めて・・・というストーリー。

 身寄りのいない気の毒な身の上のヒロインは、貧乏で不幸続きの人生だけど自分の境遇を受け入れ精いっぱい生きている健気な女性で応援せずにいられない。男性の作家が書いたにしては女性の心理をよく捉えている。アパートの不気味な雰囲気をうまく出していて、部屋の様子もリアルに思い描けるし文章力のある作家だと思う。技巧に走ったミステリーではないので凄いどんでん返しはないけれど、ストレートなサスペンスでぐいぐい読ませる展開が上手い。人生どん底のヒロインが奮闘して危機を切り抜ける展開は読後感も良いし、読みやすいので普段あまりミステリーを読まない人にもおすすめの作品だと思う。この作者の他の未訳の作品も出してほしいなあ。

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