先日、この作者の「火星の人」を映画化した「オデッセイ」を見たらとても面白かった。アクシデントで火星に一人で取り残された宇宙飛行士の話で、不屈の精神で知恵を絞って生き延びるマット・デイモン(役名何だっけ?)に感動した。最近の宇宙飛行士ものでは「インターステラー」と並ぶ傑作じゃないかな。(ちなみに他にこのジャンルで見た「ゼロ・グラビティ」「ライフ」は普通、「ムーンフォール」は駄作だと思った。)
そういうわけで、アンディ・ウィアーの小説を読んでみようと思い立ったのよ。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読みたいところだけど、単行本上下巻でぼったくりお高め価格なので、まずは文庫の「アルテミス」を。この作者の作品の中では評価低めみたいだけど、女性が主人公で読みやすいかなと。「オデッセイ」を見た印象から、どちらかというと硬派なSFを書く作家なのかと思っていたけど、思ったよりもマンガちっくでユーモラスな作風だった。ヒロインはかなりの跳ねっ返り。26歳の設定だけどティーンエイジャーのような雰囲気で、語り口はヤングアダルトっぽい。予想したような感動SF大作ではなかったけど、これはこれで面白いと思った。
企業の乗っ取りを企む北欧の大富豪が出てきたり、南米のマフィアがマネーロンダリングしていたり、月を舞台にしたクライム・サスペンスのようなストーリーで、よくこんな話を考えたなあと感心する。軽いノリで書かれているようで、設定はかなり練られていて、月の財政事情とか経済発展とかが非常に興味深く、なるほどと思った。ヒロインが性格にやや難ありのじゃじゃ馬なのがちょっと残念だけど、ストーリーはとても面白かった。