ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

誘惑の言葉はフェルメール ヘレン・ハート

 今月出たばかりの新刊。「ヴィクトリア版フィフティ・シェイズ」と帯に大きく書かれているけれど、読んでみるとあまりそういう感じはしなかった。放蕩者が無垢な令嬢と恋に落ちるストーリーだけど、それを言うならヒストリカルロマンスの大半はそんな話だし。ヒーローがお金持ちでヒロインを高価なプレゼント攻めにするところとかは、フィフティ・シェイズっぽいと言えなくもないけど。本国ではたくさんの著書が出版されている作家なので作品としての完成度は高く、文章はこなれていて読みやすい。詩的な表現にはセンスを感じたけど、内容的にはそれほど目新しいところはなく意外性はなかった。

 ヒロインは絵描きで芸術を愛していて、レディにしてはかなりの跳ねっ返り。自由でいたいから結婚はしたくないと思っている。ヒロインは13歳の時にヒーローと出会っていて、冒頭にその場面がありプロローグとしては良かったけど、その設定はあまり生かされてなかった。ヒーローは放蕩者の公爵だけど、ヒロインに対する熱愛ぶりはなかなかのもの。eroticaも書いている作家らしく作風はかなりHOTで、2人とも貴族なのに出会ってあっという間に何度も関係を持ってしまうけど、そういう描写でもヒーローのメロメロぶりが伝わってきて悪くはなかった。多少の諍いはあっても基本的にはラブラブな2人の甘いロマンス。ヒーローの性悪な昔の愛人が一騒動起こしてヒロインがひどい目にあい、最後には愛を確かめ合ってメデタシメデタシというお約束の展開で、もう一捻りあると良かった気がするけど、まあこんなものかな。

  この作品はシリーズの1作目で、シリーズ名が“sex and the season”だからもしやと思っていたけど、やはりあとがきを読むと、作者はこのシリーズをヴィクトリア版の“sex and the city”と位置付けているらしい。とは言ってもドラマとの類似点は、ヒロインの妹と女のいとこが2人出てきて4人でつるんでるところや、お互いに意中の男性とのキスの感想を述べあったりするガールズトークくらいで、キャラクター的には特に誰が〇〇役という感じではないと思う。敢えて言うなら今作のヒロインが、貴族の令嬢なのに「結婚するつもりないから純潔を守る必要ないし、ま、いっか」と驚きの早業でベッドインするところなんかは、キム・キャトラル(確か一番奔放な役だった)風かなと思ったけど、この作者の作風を考えると他も似たり寄ったりかも。次作はピアニストの妹がヒロインで、お相手は庶民の作曲家。作曲家とピアニストという取り合わせはヒストリカルでは珍しいかも。

誘惑の言葉はフェルメール(ライムブックス)

誘惑の言葉はフェルメール(ライムブックス)

  • 作者: ヘレン・ハート,岸川由美
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/11/08
  • メディア: 文庫
Lily and the Duke (Sex and the Season Book 1) (English Edition)

Lily and the Duke (Sex and the Season Book 1) (English Edition)

  • 作者: Helen Hardt
  • 出版社/メーカー: Waterhouse Press LLC
  • 発売日: 2015/04/08
  • メディア: Kindle

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