ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

ろくでなしに愛を ジュリー・アン・ウォーカー

 マグノリアロマンスが2013年に刊行した作品。この出版社も以前はロマサスやパラノーマルをたくさん出していたのに今ではヒストリカルばかりになってしまったわね。ロマサスを出してくれるのは最近は二見書房さんくらいかしら。

 これも例によって1冊だけ翻訳されて不発に終わってしまったシリーズなのね。元軍人で、退役後、秘密の傭兵組織で政府の仕事を請け負っているヒーローが主人公の典型的なロマサスで、任務は結構ヘビーで残酷な部分もあるけど、そこまでシリアスでなく、割とお気楽なサスペンス。これがこの作者のデビュー作ということで、頑張って書きました感が滲み出ていて、この組織が表向きはカスタムバイクの製造所を装っていることから、80年代のロックが流れていたり、昔の映画の蘊蓄を語るオタクがいたりと、雰囲気を盛り上げようとしているのは感じられるんだけど・・・。

 ヒーローは最初からヒロインに首ったけで、感情のない無表情な男のはずが、ヒロインが近くにいると下半身に支配されて妄想に陥ってしまう。しかもその妄想の描写がいちいち細かく書かれていて、作戦の話をしている時でも思考が脇にそれていったりするし、オタク君が映画について語り出したり、ロックの曲が流れ出したりで、読んでいてせわしなくて、最初は作者のそういうスタイルになじめなかった。1つの事柄に集中できずに話があっちこっちに飛ぶ感じ。ヒロインも、ヒーローに会うと変に緊張して関係ないことをべらべらと喋りだしたり、登場人物がみんなそんな風だから、内容がとっちらかってて、素人が書いたような稚拙さを感じたのよね。プロの作家なんだから、もうちょっと理路整然と書いてくれないものかと。まあそれがこの作者流のユーモアなのかもしれないけど、ちょっと読みづらかったわ。さらに、この組織のボスも若い女性スタッフに入れあげているらしくて、ヒーローのようにすぐ思考がそれて彼女について妄想し始めるもんだから、みんながみんな他のことに気をとられていて、この組織大丈夫か??という感じ。どうやらシリーズの2作目がこのボスと女性スタッフの話みたいだから、今作ではこの二人の関係はこんなに露骨に書かずに、ほのめかすくらいで良かったんじゃないかしら。脇役までいちいち細かい心理描写を書いてたらくどいでしょ。そういうのは主役だけでいいよ。

 基本的なプロットは良かったと思う。極秘の任務に携わっていた兄が死んでから何故かその妹が何者かに狙われるようになり、兄の相棒だった男性に助けてもらいに行く・・・って、どこかで読んだことあるような話ではあるけど、悪徳政治家やら殺し屋やら定番の悪役が出てきて、お約束の展開ではあるけど面白い。文章はやや雑然としているけど、短めにまとまっていて、なんだかんだで事件の解決に向けて話は進んでいくからそれなりに楽しめた。それでも続きを是非読みたいとは思わないから、1冊で終わってしまったのも納得かな。それなのにこの作者、本国では意外と高評価で、このシリーズも12作まで出てるのよね。そんなに上手い作家とは思わなかったけど、自分にはわからない良さがあるのかもしれない。

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 悪徳政治家と言えば、自分は数年前、しばらくアメリカに住んでいたのだけど、ちょうどその時に州知事選があって、選挙のCMがテレビでしょっちゅう流れていた。アメリカの選挙のCMというのは、候補者が自分に投票するように訴えるものもあるけど、相手の候補者をけなして投票しないように訴えるものも多い。それもほとんど誹謗中傷と言っていいような、「○○は税金値上げ屋で、自分は裏金をもらって私腹を肥やしているとんでもない政治家だ」みたいなCMを公共の電波で堂々と流しているのが最初は信じられなかった。候補者がお互いをけなし合っているCMばかりで、ちょっと品性を疑ったわ。こんなんじゃあ、政治家なんて誰も信用できないと思った。日本の政治家もあれだけど、少なくとも選挙活動においてはアメリカよりも節度があると思うわ。

ろくでなしに愛を (マグノリアロマンス)

ろくでなしに愛を (マグノリアロマンス)

  • 作者: ジュリー・アン・ウォーカー,市ノ瀬美麗
  • 出版社/メーカー: オークラ出版
  • 発売日: 2013/04/09
  • メディア: 文庫
Hell on Wheels (Black Knights Inc. Book 1) (English Edition)

Hell on Wheels (Black Knights Inc. Book 1) (English Edition)

  • 作者: Julie Ann Walker
  • 出版社/メーカー: Sourcebooks Casablanca
  • 発売日: 2012/08/07
  • メディア: Kindle

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