「壁の花へのプロポーズ」に続いて、これもキャンディス・キャンプが別名義で書いたアメリカン・ヒストリカルの初期作。1冊に2組のロマンスが書かれているのが面白い。ヒロインは牧場主の娘で男勝りなヴィクトリアと、その従妹のエイミー。ヒーローは、テキサスレンジャーのスレーターと、強盗を繰り返しているお尋ね者のサム。サムに誘拐されたエイミーを、スレーターとヴィクトリアが追跡するというお話で、「壁の花~」と比べると波乱万丈なストーリー。
ヴィクトリアとスレーターはよくいるケンカップルという感じで、お転婆なヒロインが従妹を助けるためにテキサスレンジャーと行動をともにするうちにぶつかり合いながら恋に落ちるという展開。サムとエイミーのほうは犯罪者と純真な女性という組み合わせ。読んでいて、作者はサムとエイミーのカップルのほうに肩入れしているような印象を受けた。原書のタイトル“Satan's Angel”もこの2人のことだよね?
従妹のエイミーはかなり浮世離れした女性で、子供のように無邪気な不思議ちゃんキャラ。サムは、強盗やら殺人やら凶悪なこともしてきた犯罪者だけど、なぜかエイミーに一目惚れ。誘拐犯と捕虜の恋愛というと、ストックホルム症候群的な不健全な関係になりそうだけど、エイミーが純粋すぎて、サムを良い人だと信じているから恐怖感ゼロ。ほのぼのムードで、犯罪者との禁断の恋、みたいな感じではなかった。むしろお互いにベタ惚れで、自分のような汚れた人間が彼女のような純真な女性に手を出してはいけないと我慢しているサムと、何とかして手を出してもらいたいと誘惑するエイミーのやりとりが笑える。
テキサスレンジャーに強盗犯の一味、邪悪なバウンティハンターまで出てくるいかにもウエスタンなストーリーで、リージェンシーものとは一味違うロマンスが楽しめる作品だと思う。
Satan'S Angel (Harlequin Historical)
- 作者: Kristin James
- 出版社: Harlequin
- 発売日: 1988/06/01