ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

愛の秘密はすみれ色 コートニー・ミラン

 Brothers Sinisterシリーズ3作目。上手い作家なのに、どちらかと言うとシリアスで地味目な作風のせいか、人気がいまひとつなコートニー・ミラン。今作はヒーロー32歳、ヒロイン34歳で、ヒストリカルにしてはやや年増な設定だけど、辛い結婚生活を送って未亡人になったヒロインに献身的に尽くすヒーローが素晴らしい。

 幼馴染同士で、子供の頃からヒロインのことが好きだったヒーローは、優秀な科学者なのに女性だから認めてもらえないヒロインの身代わりとして講演を行い研究成果を発表している。ヒロインは、夫に虐げられていたため自分が価値のない人間だと思い込み、人生に絶望している。ほとんど卑屈と言っていい言動には辟易しそうなものだけど、このヒロインの場合はその苦悩がかなりリアルで切ない。下手な作家が書くと学者肌のはずのヒロインが全然賢そうじゃなかったりするけど、この作者はキャラクターの描写が丁寧だから説得力がある。 そんなヒロインを支え、研究を手伝いながら、なんとか彼女を笑顔にしようとするヒーローが優しすぎて泣ける。文章からヒーローの想いが溢れ出てくるようで、やっぱり上手いねコートニー・ミラン。ちょっとした会話からも深い愛が感じられるのが流石。ヒロインの母が厳格で冷たい人かと思いきや、実は娘のことを大切に思っていたのもナイスだった。実際、娘を守るために、驚くべきことをやってのけていて、母ちゃん恐るべし。 

 ヒロインがあまりにも後ろ向きでいじけすぎな気もするけど、だからこそ、そんな彼女を幸せにしたいと願うヒーローの一生懸命さが引き立って、陰キャ陽キャのナイスなカップリングだった。ヒーローがスミレの研究を発表したのは、ちょっと狙いすぎな気もしたけど、このヒーローらしい行動で良かったと思う。心温まるストーリーの素敵なロマンスだった。 

愛の秘密はすみれ色 (ライムブックス)

愛の秘密はすみれ色 (ライムブックス)

  • 作者: コートニー・ミラン,岩崎聖
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2016/11/08
  • メディア: 文庫
The Countess Conspiracy (The Brothers Sinister Book 3) (English Edition)

The Countess Conspiracy (The Brothers Sinister Book 3) (English Edition)

  • 作者: Courtney Milan
  • 出版社/メーカー: Courtney Milan
  • 発売日: 2013/12/17
  • メディア: Kindle

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