ヒストリカルロマンスは新人作家が次々出てきては消えていくので、期待せずに読んだけど、意外と良作だった。新しい作家にしてはまずまずだなと思ったら、それなりにキャリアのある作家さんのようで、ブロンテやオースティンがテーマの作品も書いているからか、ラブコメのような現代的な作風の中にも一応時代に関する見識が感じられたし、脚本家の仕事もしていたそうで、そのお陰かキャラクターの描き方が活き活きとしていて良かった。
ヒロインはお金持ちのアメリカ人で、イギリスの貴族と結婚させようと目論む母親に中年のいやらしい子爵との結婚を強要され、耐えられずに逃げ出してアメリカに帰ろうとした矢先、強盗に全財産を盗まれ一文無しになり、大富豪の娘であることは隠して、助けてくれたヒーローの家で家庭教師として働くことに。イギリスにやってきたアメリカ人が、その大胆さで困難を乗り越えていくところは、いかにもアメリカ人好みのサクセスストーリーという感じ。ヒーローは父親が財産を食いつぶしたせいでお金に困っている伯爵で、家族にも問題があり色々と苦労している。高潔な男性で、雇い人とは決して関係を持たないと誓っているのにヒロインに惹かれてしまい、一緒にいると手を出してしまいそうで必死で離れていようとするところが微笑ましい。貴族らしい頑固な性格が、ずけずけと物を言うヒロインによって懐柔されていくのが良かった。ストーリーに粗さはあるけれど、キャラクターの魅力で楽しく読める作品だった。
伯爵家の家庭教師(ガヴァネス)は逃げだした令嬢 (ラズベリーブックス)
- 作者: シリア・ジェイムズ,旦紀子
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2018/12/10
- メディア: 文庫
Runaway Heiress: A Dare to Defy Novel (English Edition)
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