あの愛は幻でも　ブレンダ・ノヴァク - ロマンス＆ミステリー小説感想日記

　高校時代、恋人に監禁され拷問を受け、もう少しで死ぬところだったヒロインは、その経験から精神科医になり、アラスカの刑務所でサイコパスの研究に取り組んでいる。真面目なサスペンスで派手なアクションはあまりないけれど、服役しているサイコパスとの緊張感あふれるセッションや、同僚の精神科医との人間関係、看守の腐敗、盛沢山の内容で登場人物も多めだけど、とても読みやすく書かれていて面白かった。服役中のサイコパスと、彼らを研究する精神科医の興味深い日常を描きつつ、刑務所のスタッフが殺された事件の犯人捜しのミステリーが進行していき、誰もが怪しくて最後まで緊張感が途切れることがなかった。これだけの内容をうまくまとめた作者の手腕に感心する。

　ミステリーとしてもかなりの完成度だけど、そこにロマンスもうまくはめ込まれていて、男性との関係に臆病になっているヒロインと町の警官のヒーローが少しずつ関係を深めていく様子がロマンティックに書かれている。年下のイケメンがこんなに一途に愛してくれるなんて素敵よね～。サスペンスの緊張感を損なうことなく、ロマンスが薄くて物足りないと思わせることもなく、丁度良い匙加減で書かれていてバランスの良いロマサスだった。