ミステリアスな雰囲気のロマサス。ヒロインは売春婦が住むアパートの管理人のような仕事をしていて、女性たちの安全をいつも気にかけ世話を焼いている。ヒーローは、ホテルに宿泊中の妻と携帯でビデオ通話をしている際に、部屋に何者かが押し入り彼女を殺害するというショッキングな事件が起き、一部始終を映像で見ていながら何もできなかったという後悔に苛まれ苦しんでいる。そして妻を殺害されて4年が過ぎ、ある日、弟と二人でヒロインのアパートの修繕係としてやって来る。ヒーローについては妻が悲惨な殺され方をしたということと、高学歴で昔は会社を経営していたらしいことしかわからないけれど、謎めいた雰囲気の裏に高潔な人間性があり、ヒロインが彼に惹かれるのも納得で、ヒーローのほうも、苦しい境遇にもかかわらず明るく生きている彼女を好きにならずにいられない。ダークなストーリーながら、ロマンスの部分ではヒロインの明るいキャラクターが全開になり、ユーモラスな会話が楽しく、素敵な男性と付き合い始めたヒロインのウキウキした気分が伝わってきてラブコメのような雰囲気だった。
辛い過去を抱えたヒロインは、明かしたくない秘密を聞かれたら、答える前に「嘘」と言って、真実とは違うことを言うのが会話におけるゲームのようになっていて、原題の“The truth about lies”はそこから来ているのだけれど、お互いにどうしても相手には言えない秘密がありながら、できる限り真実を伝えたいと望む二人の会話が興味深い。ロマンスの進行とともに、謎めいていた彼のプロフィールが明らかになっていくけれど、衝撃の事実というようなものではなく、イマイチよくわからなかったヒーローの状況がわかってくるという感じだった。
面白かったけど、これは2部作で、この1冊では話が完結しておらず、途中でブツ切りになっているような終わり方だったので続きが気になる。ヒーローの“何の意味もない”タトゥーの意味も知りたいし。こういうのは続きを早めに出してもらいたいわね。
ところで、日本人は小説を読む際にあとがきから読む人が結構多いというのを何かで読んだことがあり、翻訳小説の訳者さんも、あとがきにあまりネタバレを書かないようにしてくれている人が多いけれど、この作品は先にあとがきを読まないほうがいいと思う。作者が小出しにしていたヒーローの情報がまとめて要約してあるので、先に読んでしまわないほうが、より本編を楽しめると思う。
The Truth About Lies (The Truth Duet Book 1) (English Edition)
- 作者: Aly Martinez
- 発売日: 2018/08/21
- メディア: Kindle版