本が厚くて重いだけでなく内容もヘビーで、読み終わった後ぐったりするような作品だけど面白かった。長いけどよく練られたストーリーで、凄惨な連続殺人の捜査に、ヒロインの過去の謎も絡めてよく出来ている。それにしてもこのヒロイン、幻覚が見えたりして糖質っぽいし、精神的なストレスから男漁りに走ったとか、海外ドラマ“Homeland”のクレア・デーンズみたい。作者も多少は意識してるんじゃないか。
サスペンス自体はよくあるシリアルキラーものという感じで、淫らな女性を罰するためにむごたらしい殺人を犯す歪んだ宗教観を持つ異常者の犯行という、どこかで読んだことあるようなパターンだけれど、犯人を突き止めるまでの捜査の過程が面白く飽きさせない。警察の内部事情や政治との絡みなんかもうまく盛り込まれているし、舞台がカナダだから、ヒーローが元騎馬警察だったりするのが興味深い。(アメリカのFBIみたいなものかと思いながら読んでいたけどどうだろう。) 最後まで気の抜けない緊迫感のあるサスペンスだった。
ロマンスよりもサスペンスに比重が置かれた作品だけど、ヒーローは優しくて素敵だった。(大学生の娘がいて妻と離婚調停中だけど・・。)ヒロインが精神的にやや壊れかけなぶん、ヒーローに包容力があり、良い組み合わせだと思う。かなり興味深い境遇のヒロインではあるけど、どちらかというとキャラクター描写よりストーリー重視という感じの作品なので、そこまでヒロインに感情移入はしなかった。魅力的なキャラクターだけどロマサスのヒロインにしてはハードボイルドで、そこが好みの分かれるところかも。そもそもロマンス小説好きな人は、根本的にサスペンスにおいても主人公の心の葛藤とか心理面を(恋愛面に限らず)重視しているんじゃないかと思うけど、この作品のヒロインは、ものすごく複雑な過去を抱えていて、まさに葛藤の宝庫(!)なのに、そのへんの心理描写は割と淡泊だったのがちょっともったいない気がする。まあ、そこに頁を割きすぎても女々しくなるし、バランスが難しいだろうけど。
この作者は元々ハーレクインのロマサスを書いていて、その後長編にシフトしたみたいで、シルエット・ラブストリームに既刊が3冊あった。
The Drowned Girls (Angie Pallorino Book 1) (English Edition)
- 作者: Loreth Anne White
- 出版社: Montlake Romance
- 発売日: 2017/06/20