キャンディス・キャンプがクリスティン・ジェイムズ名義で書いたアメリカン・ヒストリカル。この作品はFurgason Brothers2部作の1作目だけど2作目は翻訳されてない。続きが出てないのに1作目だけ読むのもどうかと思い、読むのを後回しにしてたけど、読んでみたらすごく面白かった。この作者のアメリカン・ヒストリカルはMIRA文庫から何冊か出てるけど、これが一番良かったと思う。
モンタナで製材所を営む父親の次男として生まれたヒーロー。母親は都会の令嬢で、夫を愛してはいたけれど、荒涼とした土地での生活になじめず、長男を夫の元に残し、幼い次男だけを連れて東部の実家に戻る決心をする。父や兄と引き離され都会に連れて行かれる少年の悲痛な思いが泣ける。このプロローグを読んだだけで心を鷲掴みにされたわ・・。フランクフルトに連れて行かれるアルプスの少女ハイジみたい。傷ついた少年のヒーローが痛ましくて同情してしまった。そんな少年が大人になり義務を重んじる礼儀正しい紳士になっても、心のどこかに喪失感を抱えているのは当然で、母の遺言で、亡くなったと聞かされていた父と兄が生きていると知り、郷愁に駆られてモンタナに向かうヒーローの、いわば自分探しの旅にロマンスを絡めた物語がとても良かった。
ヒロインはズボンを履いて製材所で働く男勝りな女性。初対面でヒーローに少年と間違われて激怒しながらも、心の奥では傷ついていて、そんな乙女心が切ない。ヒーローも婚約者がいながらもヒロインに惹かれていくけれど、義務と愛情の板挟みで苦悩する。ヒーローが高潔で義理堅い男性なだけに、どうすることもできない2人の恋が辛い。ありふれた展開のロマンスではあるけど、叶わぬ恋と知りながらも愛し合う2人の激しい感情がよく描かれていて引き込まれた。初期作だけど上手いわ。
そしてやっぱり2作目が翻訳されてないのが惜しい。ヒーローの婚約者と兄のロマンスのほうも読みたかった。スピンオフというよりも表裏一体の話だからすごく気になる。2作目はドロシー・グレンという別の作家が書いているらしいけど、この作家さん、別名ドロシー・ガーロック、またの別名ジョアンナ・フィリップスで、別名では昔何作か翻訳も出ていて、当時はそこそこ人気のあった作家みたいだから、2作目も翻訳してくれたら良かったのになあ。
The Gentleman (Legacy of Love S.)
- 作者: Kristin James
- 出版社: Mills & Boon
- 発売日: 1994/10/14