この夏を忘れない　ジュード・デヴロー - ロマンス＆ミステリー小説感想日記

ナンタケットの花嫁シリーズ１作目。冒頭からヒーローが幽霊と喋っているけど、最初は状況が呑み込めなくて戸惑った。でも読んでいるうちに、この幽霊が共存する不思議な世界に自然と馴染んで違和感を感じなくなる。主役の二人のロマンスに、それぞれの家族模様、さらに過去の恋人たちの悲劇も加わり、込み入った設定の盛沢山な内容だけど、読みやすく書かれていて混乱することなく読め、ベテラン作家の筆さばきに感心する。

　建築家の卵のヒロインにとって、伝説的な建築家のヒーローは憧れの存在で、出会う前から彼の唇について詩を書いたりしているのが恥ずかしすぎて笑える。何とも乙女チックなヒロインが可愛かった。ヒーローはひねくれ者のプレイボーイだったけど、ヒロインに出会ってぞっこん惚れ込みメロメロになっている。面白かったけれど、主役カップルが始終ラブラブで、特に2人の関係に危機が訪れるわけでもなかったので、若干物足りない気はしたかも。でもそのぶん、過去の恋人たちのロマンスが悲劇的なので、バランスは取れているのかもしれない。700頁越えの長い作品で、このお互いに首ったけのカップルがイチャイチャしているだけだったら冗長になるところだけど、やたらと出てくる親戚たちそれぞれに色んなバックグラウンドがあって面白いし、ヒーローの祖先が幽霊になってしまった過去の悲劇が次第に明らかになっていく展開が興味をそそり、最後まで読ませるストーリーだった。２作目も続けて読んだので次の記事へ。