Flashpoint シリーズ1作目。この作者は作家になる前は考古学者として長年働いていたそうで、考古学者が主人公の作品をたくさん書いている。今作もアフリカのジブチで発掘をしている考古学者のヒロインと、米軍の特殊部隊員のヒーローのロマンティック・サスペンス。
読み始めは、重要な遺物を発見したヒロインが何者かに狙われ、ヒーローとともに逃走するサバイバルものかと思ったけれど、予想とは違い、遺物の発見自体はそれほど重要ではなく、発掘に関する政治的な思惑の絡んだ大きな陰謀をめぐるサスペンスで、サバイバル的な要素はあまりなかった。裏で糸を引いているのが中国ってところが最近の世界情勢を反映しているわね。遺跡の発掘にこんな風に色んな利権が絡んでいるというのが興味深いけれど、ロマンス小説に盛り込む内容にしてはやや込み入った話なので状況説明的なエピソードを挟むため、ストーリーが盛り上がるまでに少し時間がかかった。後半、ヒロインが誘拐されてからは怒涛の展開で面白かった。
ロマンスはというと、ヒロインのボディガード役を命じられたヒーローは、上官の命令がーっ、昇進がーっ、軍でのキャリアがーっ、と理屈をごねてヒロインを避けてはいるものの、時々気持ちを抑えきれなくなって暴走する。真面目なサスペンスのわりにロマンスはくだけた感じで、ヒーローが卑猥な内容のメールを送りつけたと思ったら、ヒロインのほうは挑発するために自分の胸の写メを送ったりしている。まあそのやりとりはなかなか笑えるけど、いい大人が何をやってんだか。翻訳者がパイ〇ツとか訳してるくらいだから元の文章もかなり卑猥なんだろう。2人ともやたらとムラムラしていて、ロマンティックという感じではないけど、まあこれはこれで面白い。ヒロインが誘拐されてからはサスペンスだけでなくロマンスも盛り上がり、ヒーローも自分の気持ちに気づいて必死でヒロインを助けようとするのが良かった。
ヒロインが考古学者にしては型破りなタイプで、最初は無謀な行動が鼻につき、学者のわりに知性が感じられない気がしてイマイチだと思ったけど、終盤の活躍でかなり見直した。ヒーローも始めのうちはちょっと感じ悪くて好みと違ったけど、読んでるうちに、そう悪くないと思えてきた。読み終わってみるとストーリーもよく出来ていて、遺物に関するスヌーピーのジョークを暗号にしたのが最後で生かされていたり、ヒロインの腕に埋め込んだ追跡装置がサスペンスでは重要な役割を果たしていたけど、ロマンスでは笑えるエピソードになっていたり、ネタの使い方が気が利いていて、なかなか面白い作品だったと思う。
危ない夜に抱かれて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))
- 作者: レイチェル・グラント,水野涼子
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2019/02/21
- メディア: 文庫
Tinderbox (Flashpoint Book 1) (English Edition)
- 作者: Rachel Grant
- 出版社/メーカー: Janus Publishing
- 発売日: 2017/02/14
- メディア: Kindle版