オーストラリアの作家だけど、アメリカが舞台なのね。ヒロインは、保険の査定員をしているおとなしくて少々退屈な婚約者と同棲しているけど、いつも仕事優先の彼に愛を感じられず別れる決心をする。彼の留守中に出て行こうとした矢先、突然家が爆破され、何者かに誘拐されてしまう。実は彼は保険の査定員ではなく秘密組織の工作員で、ヒロインも組織の陰謀に巻き込まれて・・・というお話。スピード感のある展開で、派手なドンパチ合戦満載のB級アクション映画のようなストーリー。
退屈な人だと思っていた婚約者が実は工作員だったという設定はなかなか面白く、おとなしいふりをやめたヒーローが危険な男に変身するのを見て仰天するヒロインが楽しい。自分を騙していたヒーローに怒りを覚えながらも、ワイルドな彼に惹かれていくのはお約束。ヒーローは普通っぽくするためにヒロインとの夜の営みもわざと控え目に不器用にしていたらしく、本気を出したら凄かった!というのが最大の読みどころかもね(笑)。
単純明快で読みやすいのは良いけど、サスペンスのプロットはちょっと子供騙しという感じがしないでもない。派手でインパクトはあるけどありえない展開でリアリティには欠けるかも。ヒーローの所属する組織内で抗争が起きるのだけど、内輪もめで殺し合いになるってどんな組織よ。マフィアじゃあるまいし。NYのマンハッタンみたいな人口密集地域で銃撃戦を繰り広げるとか、隠密に任務を遂行している組織ならもっと目立たないようにするでしょ普通。とにかくみんなでやたらと銃をぶっ放している印象で、民間人のヒロインまで銃撃に加わって敵を倒している。豪快なストーリーで、女性作家特有の繊細さみたいなものはあまり感じられないので、そこが好みの別れるところかも。私はもう少し知的なサスペンスのほうが好きかな。
心理描写は最小限でセリフが多めなので、まどろっこしく感じることはなく、文章も簡潔で深く考えることなくサクサク読めるストレスフリーな作品だと思う。スピード感とアクションに特化した単純なストーリーで、楽しいロマサスだった。
いつわりの夜をあなたと (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))
- 作者:カイリー・スコット
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2020/02/21
- メディア: 文庫
- 作者:Kylie Scott
- 出版社/メーカー: Independently published
- 発売日: 2019/06/27
- メディア: ペーパーバック