S・E・フィリップスは最近あまり音沙汰がないけど、昔は現代もののロマンスでは一番人気の作家だったわよね。「キス・ミー・エンジェル」は名作だったし、「シカゴ・スターズ」シリーズは良作揃いで、一時期ハマって立て続けに読んでいたら、ちょっとワンパターンなところが目に付いてきて、あまり読まなくなってしまった。それでも10冊くらいは読んだと思う。
そういうわけで、もう何年も読んでなかったS・E・フィリップスだけど、久しぶりに読んでみたらとても面白く感じた。笑えて泣けるストーリーが絶妙で上手い!この作者の良さを再認識したわ。ヒロインの状況がブラピに捨てられたジェニファー・アニストンとしか思えなくて最初はちょっと閉口したけど、テンポの良い会話と、キャラクター造形はさすがで、芸能人が主人公というのはあまり好きな設定ではないにもかかわらず、楽しく読めたわ。
女優のヒロインは、ラスベガスでのちょっとしたアクシデントで思いがけずヒーローと結婚してしまったけど、すぐに離婚すると体裁が悪いので、しばらくは熱愛中のカップルのふりをして結婚生活を続けるよう彼に持ちかける。素直で優しい女性だけど、イメージを保つのに必死なセレブらしい一面もあって人間味がある。キャラクターを美化しすぎてないところがリアルで良い。
人気ドラマの主演俳優だったのに、道を踏み外してキャリアを棒に振ってしまったヒーローは、昔はとんでもなく嫌な奴で、当時の共演者でまだ少女だったヒロインにもかなりひどい仕打ちをしていた。今は更生したけど性格はまだひねくれていて、なりゆきでヒロインと結婚することになっても、自分のキャリアのために彼女を利用しようとする。そんな最低男が最後には彼女を愛するようになるのだけど、ハッピーエンドに辿り着くまでに何度も下手を打ってヒロインの信用を完全に失い、どん底から起死回生するのが読み応えがあり面白かった。(ヒーローが愛していると気付くのが唐突すぎて、何でそこで??と思ったけど。)脇役も個性的で印象深い人物が多く、ロマンスだけでなく、色んな人間ドラマがあり、特にヒロインと父親の間の確執と和解のエピソードが感動的だった。良い話だったわ。
この作者も全盛期は過ぎたように思うけど、まだ書いているみたいで、原書では2016年にシカゴ・スターズの新作が刊行されている。あのシリーズ、まだ続きがあったのね。

きらめく星のように (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション フ 8-10 )
- 作者:スーザン・E・フィリップス
- 発売日: 2009/11/20
- メディア: 文庫

What I Did for Love: A Novel (Wynette, Texas)
- 作者:Phillips, Susan Elizabeth
- 発売日: 2009/03/01
- メディア: ペーパーバック