ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

メイフェアの不運な花嫁 M・C・ビートン

 遅ればせながら、M・C・ビートンの“不運な屋敷”シリーズを読んでみた。原書が1986年に書かれたものだから、最近のヒストリカル・ロマンスとは違ってクラシカルな雰囲気があるわね。屋敷の使用人たちが活躍する珍しいストーリー。普通のヒストリカルだと大抵、貴族に仕える空気のような存在として書かれているけど、使用人にもそれぞれの人生があるのよね。ずる賢い管理人に搾取されながらも、みんなで協力しながら暮らしていて、同じ屋敷で働く運命共同体という感じ。イギリス人作家らしい風刺の効いたストーリーがとても面白かった。中編が2話入っていて、短い話だけど中身が濃い。 

 1話目のヒロインは、孤児で気の毒な身の上の割に飄々としていて、無邪気なふりして賭博でいかさましたりするのが笑える。頭の軽い令嬢と見せかけて実は結構計算高く、伯爵と結婚するために使用人も巻き込んで策略を巡らしたり、なかなか姑息なことをしているのだけど、それが不愉快ではなく、むしろ応援したくなるという稀有なキャラクター。こういうヒロインを書ける作家ってあまりいないと思うわ。

 2話目は、美人の姉のせいで影の薄い平凡な容姿のヒロインが、ハンサムな男爵を射止める話で、使用人たちが、美人だけど性格の悪い姉に意地悪して、優しい妹の味方をするのが痛快で楽しかった。ヒロインの母親がとんでもなく高慢ちきな人で、使用人を見下していて、見栄っ張りなのにケチで、ここまで徹底的に嫌味だと逆に笑える。ヒロインが、昔の殺人事件の謎を解くちょっとしたミステリーも面白かった。 

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