この作者の「過去が壊れる時」は、長編だけどハーレクイン・ロマンスと代わり映えしない内容だったので、今度はサスペンスっぽい「パワー・プレイ」を読んでみた。これは原書が1988年刊行で、その頃はシドニー・シェルダンの影響で、登場人物多めの壮大なストーリーでジェットコースターのような展開の小説が流行っていたんじゃないかと思う。この作品も、まさにそんな感じのストーリーだった。
物語はヒロインの母親の話に遡り、世代を跨いだ波乱の人生が語られる。ジプシーの女性が同じ部族の婚約者がいながらスコットランド人の男性と愛し合って生まれた女の子がヒロインで、子供の頃から部族の仲間から疎外されていた。育ててくれた祖母が亡くなった時に部族を離れ、一文無しの状態から仕事を得てなんとか独り立ちするけれど、17歳の時に知り合った男性の仲間からレイプされる。それもただの強姦じゃなく悪魔崇拝のミサで処女の生贄として捧げられるという恐ろしいもので、事件後、将来絶対復讐してやると心に誓う。気味の悪いエピソードで読者の度肝を抜くなかなかインパクトのある展開で、ハーレクインの作家にしてはかなり頑張ってると思うけど、サスペンスとしてはやや詰めが甘いところがあるかも。ヒロインの復讐にしても、ものすごく恨みを募らせていた割にちょっと生ぬるいような。
とにかく盛沢山な内容で、無一文からのし上がっていくヒロインの半生を書きながら、復讐の対象となる4人の男性についても、それぞれの人生について詳しく書かれていてそれなりに面白いけど、ここはもう少し端折っても良かったかも。(まあ、こういう登場人物が盛り沢山な小説が流行っていたから書いたんだろうけど。)
最後の1/3くらいはロマサスらしい展開で、ヒーローがヒロインに近づいたと思ったら、あっという間に彼女にメロメロになり、ヒロインも初めは彼を信用せず用心していたけど、男性を寄せ付けずに生きてきた割には結構簡単に恋に落ち、なかなかの熱々ぶりで楽しかった。ヒロインはラブラブで復讐なんてどうでもよくなってるけど、敵のほうは容赦なく、彼女を殺しにやって来てサスペンスも盛り上がり、2人は愛を確かめ合い結婚してめでたしめでたしという、ロマンス小説らしいエンディングだった。(あれだけ恐ろしいレイプ事件の結末としてはハッピーすぎる気も・・。)山あり谷ありのヒロインの人生を描いたスケールの大きな復讐劇だけど、P・ジョーダンらしい、ロマンスの甘さもあるストーリーで面白かった。
この作品を読んで思い出したけど、昔読んだエリザベス・ゲイジもシドニー・シェルダンの作風をロマンス多めにして女性向けにしたような感じで面白かったな。登場人物の人生が運命的に交差する書き方が上手かったという印象がある。
POWER PLAY (Mira) (English Edition)
- 作者:Jordan, Penny
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: Kindle版