この作品は、ロマンス要素はあまりないメディカル・サスペンスだけど、テス・ジェリッツェンは元々ハーレクインでデビューして、長編のロマサス「外科医」でRITA賞を受賞しているから、ロマンス小説界でもそれなりに知名度のある作家だと思う。
作者が医者だからこそ書ける非常に興味深いストーリーで、読みだしたら止まらない面白さだった。専門的な話なのに難解なところはなくとても読みやすくて、医療ものの小説をそんなにたくさん読んでるわけじゃないけど、かなりの秀作だと思う。そもそも医学の知識がないと書けないジャンルだから、作品自体が少ない気がする。ここ数年で読んだメディカル・サスペンスと言えば、ジョシュ・バゼルの「死神を葬れ」くらいしか思い出せないけど、確か J・バゼルも医者だったはず。医者で作家ってすごいわね。(インチキ臭い健康法のハウツー本を書いてる医者ならよくいるけど。)
1999年刊行の、だいぶ前の作品だけど今読んでもそれほど古さを感じなかった。主人公がER勤務の女医で、医療現場の描写もかなりリアルで迫力があった。手術の様子なんかもかなり詳細でグロいけど引き込まれる。昔読んだ「外科医」も良かったけど、「中間生命体」は医学的な内容が濃くてサスペンスとして面白い。患者の死に疑問を持って死因を探るうちに陰謀に気づいたヒロインが、嵌められて追いつめられていくのにハラハラさせられた。検死医の男性とのロマンスがほんのちょっぴりだけあったけど、その検死医もなかなか興味深いキャラクターだったから、2人の関係をもうちょっと書いてくれると良かったかも。
すごく面白い作品なのに、ハードカバーしか出てないから読んでる人が少なそう。文庫化すれば良かったのに、もったいないな。
- 作者:テス ジェリッツェン
- メディア: 単行本
Life Support (English Edition)
- 作者:Gerritsen, Tess
- 発売日: 2010/07/20
- メディア: Kindle版