ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

シルバー ペニー・ジョーダン

 ペニー・ジョーダン会心のサスペンス・ロマンスだそうで、太っていて不細工だったヒロインが、整形して絶世の美女になり父親を殺した男に復讐するという、わくわくするようなストーリーに期待して読んでみた。インパクトのある設定で面白かったけど、サスペンス自体はたいしたことなく、ロマンスはハーレクイン風で、やはりP・ジョーダンはどこまでもロマンス作家なんだなと思った。復讐自体よりも、そこに至るまでの主人公の半生に頁が割かれていて、ストーリーの大半はヒロインとヒーローの生い立ちを書くことに終始している。華麗なる復讐劇というわりにはヒロインの復讐計画がかなり大雑把でツッコミどころ満載だったけど、まあロマンス小説だから・・・。

 4部構成で、第1部は復讐の準備として、ヒロインが盲目のヒーローに誘惑のテクニックを習うところが書かれている。最初にいきなり艶っぽい話を持ってくるところがロマンス小説だわね。復讐心に燃えているにしては、愛の手ほどきをしてくれるヒーローにどぎまぎして上の空になり、結局彼に惚れてしまうヒロインは、いかにもP・ジョーダンが書きそうなタイプ。そもそも誘惑の仕方を教わるなら、男にモテる女の人に習ったほうが良くないかと思うけど、ロマンス小説的には、この “愛の手ほどき” の部分が重要で外せないんだろうね。

 第2部はヒロインの生い立ち。由緒ある家柄で金持ちの一族の一人娘だけど、思春期の頃には過食に陥ってグロテスクなほど太っていたという。そして財産を狙うハンサムだけど腹黒い従兄に言い寄られてのぼせ上った挙句に父親を殺され、復讐を心に誓う。醜いヒロインが整形して超美人に生まれ変わるという設定が衝撃的で、それがこの作品の目玉だと思うけど、美女になって従兄を誘惑し夢中にさせて捨てるという復讐の仕方が何だかなあ。従兄は麻薬の売買に関わっている犯罪者なんだから、証拠を集めて警察に突き出すほうがよっぽど復讐になると思うけど、これもロマンス小説的に、“美人になって誘惑して捨てる” というのが重要なんだろう。結局、いかにも女性読者が好きそうなシチュエーションで仕立てた復讐劇という感じで、疑問に感じるところも多々あるけれど、あまり深く考えなければこれはこれで面白い。

 第3部はヒーローの生い立ちで、年上の好色な女性と初体験したとか、俗っぽいエピソードを盛り込みつつ、ゲイの兄が自殺した事件や、奥さんとの出会いから結婚まで、そして麻薬捜査官の仕事で潜入捜査中に敵に奥さんを殺され、爆撃を受けて失明するという波乱すぎる人生が書かれている。

 第4部でついに復讐実行となるけれど、ひそかにヒーローを愛しているヒロインは、従兄に近付いても、彼に触られるだけでゾッとしてしまい、嫌悪感を隠すのが精いっぱいで誘惑どころじゃない。ヒーローのほうも実はヒロインに惚れているけど、彼女がまだ従兄を愛していると勘違いしていて、自分は身代わりだと落ち込んだりするところは、この作者お得意のすれ違いロマンスだわね。終盤で彼女がもう従兄を愛してないと知ったヒーローが、復讐のためにあいつを誘惑してベッドに入る必要はないと諭し、ヒロインもあっさり納得。詰めの甘すぎる復讐計画だったけど、そのおかげで痩せて美人になって、ヒーローと結ばれたのでオールOKということか。作者を擁護するために言っておくと、最後にはちゃんとサスペンス的な展開があり、ヒーローが妻を殺した敵と対決する場面は緊張感があって良かった。

 復讐ものとしてはヒロインが甘ちゃんすぎる気がするけど、ツッコミを入れつつ読むにはなかなか楽しい作品だった。

シルバー (mirabooks)

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Silver (Penny Jordan Collection) (English Edition)

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