ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

バタフライ スターズ  キャサリン・ハーヴェイ

 P・ジョーダンの「シルバー」を読んで、整形ヒロインの復讐劇と言えば、キャサリン・ハーヴェイの「バタフライ」が面白かったなと思い、昔読んだのを引っ張り出してパラパラと見ているうちに、気づいたら読み耽っていた。かなり古いけど復讐ものの名作として結構有名な作品だと思う。ついでに未読だった続編の「スターズ」を読んでみた。

 「バタフライ」は、父親にレイプされて家から逃げ出し、困っていたところを助けてくれた男の恋人になったけれど、その男に売春宿で働かされて稼ぎを搾り取られ、妊娠したら無理やり闇医者に連れていかれ、ずさんな中絶処置で死にかけたところを放り出されるという悲惨すぎる境遇のヒロインが、ものすごい執念でその男に徹底的に復讐する壮絶なストーリーで、読み終わると本当に胸がスッとする。これを読んだらペニー・ジョーダンのヒロインなんてお子ちゃまに思えてくるわ。とにかく復讐だけを求めてストイックに生きているヒロインなので恋愛の入る余地はないのだけれど、そのかわりに彼女の経営する女性のための高級クラブに、男娼の奉仕を求めてやって来る女性たちのロマンスが書かれている。ラブシーンが結構きわどくて、これを昔(たぶん10年くらい前)読んだ時にはちょっとギョッとしたことを覚えている。(今読むとたいしたことないな。)過去と現在を交互に書く手法なので最初は少しわかりにくいけれど、ヒロインの復讐の行方がとにかく気になって、最後まで見届けないことには気が収まらないので勢いで読んでしまう。今読んでもやっぱりすごい復讐劇だと思うわ。

 それに比べると「スターズ」のヒロインはそこまで悲惨な境遇ではないけれど、なかなかに波乱万丈な人生だった。「バタフライ」のヒロインの双子の妹で、出生時に養子に出されて姉とは生き別れになっている。子供の頃から太っていたけれど、一念発起して痩せて、その体験をもとにダイエット関連の会社を立ち上げる。ヒロインだけでなく、男に利用され虐げられてきた女性たちがそれぞれに復讐を果たすのが面白い。ヒロインのインパクトは前作には及ばないけれど、脇役の女性たちのエピソードは前作よりも良かった。出てくる男がみんな女を食い物にする最低のろくでなしばかりなので、女性たちが、そんな奴らをギャフンと言わせた時にはかなりの爽快感を得られると思う。

バタフライ〈上〉 (角川文庫) バタフライ〈下〉 (角川文庫) スターズ〈上〉 (角川文庫) スターズ〈下〉 (角川文庫)

ButterflyStars

 

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