ロマンス小説感想日記

ロマンス小説感想日記

海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

Mの日記 ローラ・リーズ

 SMを題材にしたサスペンスで、衝撃の問題作というだけあって凄い内容。ハードカバーが2000年発売で、2007年に文庫化されただいぶ前の作品だけど、たぶん発売時には物議を醸した話題作だったと思われるので、ロマンス小説とはちょっと違う気がするけど、一応紹介がてら感想を。

 この手のものはたいてい賛否両論で評価が分かれるものだけど、これを翻訳した池田真紀子さんは、アイリス・ジョハンセンのサスペンスを訳していた人で、ジェフリー・ディーヴァーとかの大物も手掛けているベテラン翻訳者だから、たぶんこの人が訳した作品なら面白いだろうと期待して読んでみた。(ちなみに、フィフティ・シェイズのシリーズもこの人が翻訳していて、サスペンス系の作品が多い人なのに意外だったけど、フィフティ~のずっと前にこんなすごいSMものを訳してたのね・・。)よくあるSM絡みのサスペンスだろうと、あまり深く考えずに読み始めたら、本当に衝撃的な話でびっくりした。これを読んだらフィフティ・シェイズなんて、お尻をちょっとペシペシしてごっこ遊びをしているだけの他愛ないもののように思える。

 妹が自宅で死体となって発見され、ヒロインは、妹の恋人だったSM趣味の大学教授のMが犯人に違いないと確信して彼に近づく。妹の情報を手に入れるため、彼に言われるままSMの世界に嵌まり込んでいくヒロイン。妹の秘密が少しずつ明らかになっていき、実はすごい闇を抱えていたことがわかる。痛々しくて暗く、人間の心の内面をえぐり出すようなストーリーだった。

 そしてMの言うなりになってどこまでも堕ちていくヒロインにゾッとさせられる。やはりSMの主従関係というのは、心理操作というか洗脳に近いものがあって怖い。SMに嵌る人というのはどこか病んでて歪んでるものなのね。行為がどんどんエスカレートしていって、最後のほうはかなりグロかったので、嫌悪感を覚えることを覚悟して読んだほうがいいと思う。SMの倒錯した世界がショッキングで不気味だった。

 読んでいる間は過激なSMプレイに気を逸らされるけれど、読み終わってみれば、なかなかに考えさせられる内容で、SMだけではない深いものがあったと思う。(SMの描写が衝撃的なのは確かだけど・・。)作者はよくこんなの書いたなあと感服する。暗くて鬱な話だけど、なぜか引き込まれて読んでしまう吸引力のあるストーリーだった。やはり池田真紀子にハズレはないな。ローラ・リーズはこれの他にもう一冊「Sの誘惑」という作品も出ているけど、そっちはハードカバーだけで文庫化されてないのよね。まあ、これだけハードな内容だと1冊読めば充分という気もするけど。

 Mの日記 (Hayakawa novels)

無断転載禁止 copyright © 2018 BOOKWORM