二見文庫2007年刊行のロマサス。なぜか3部作の2作目だけが翻訳されている。あとがきによれば、ホットな官能シーンが売り物の作家だそうで、あらすじではシリアスなストーリーのように思えたけど、読み始めると何だかサスペンスよりもそっちの描写にやけに力が入ってて予想と違った。
警察官のヒロインは幻視で未来の出来事が見えるらしい。出身がニューオリンズで、魔女とか幽霊とかが多そうな土地柄だからこういう設定にしたんだろうけど、何だか中途半端な能力で、ストーリー上あまり活かされてなかったような。母親は幼いころに亡くなっていて、父と姉と暮らしていたけど、凶悪な伯父に父親を殺され、姉は行方不明に。伯父はヒロインも死んだと思っていたけど、実は生きていたことを知って殺しに戻って来るという物騒な話で、身の毛のよだつサスペンスかと思いきや、敵役の伯父が意外と間抜けでたいして怖くなかった。
そのかわりロマンス(というかラブシーン)のほうは頑張っていて、ヒーローが(本業は記者だけど)ストリッパーとして舞台に立った日にヒロインと出会って即ベッドインとか、目隠ししてチョコレートがけ(?)とか、妄想入ってて笑える。ヒーローはヒロインに一目ぼれでメロメロになってて面白い。しかもヒロインの親友とヒーローの弟が恋に落ちてイチャイチャしているし、ヒロインの姉とその恋人も出てきてラブラブなところと見せつけていて、そこらじゅうカップルだらけ。サスペンスに期待しなければそこそこ楽しい作品だと思う。
これは作者の初期の作品だけど、調べてみたら、この人は今でもロマサスやパラノーマルを書いていて、未だにこれといったヒット作には恵まれていないみたい。これはこれでそれなりに面白いけど、メジャーな作家になるには何かが足りないということかな。
- 作者:カレン ケリー
- メディア: 文庫