昔からミステリーはアメリカの作家を好んで読んでいて、イギリスの作家もたまに読むけど、英国ミステリーは当たり外れが激しい気がする。実はこれを読む前にL・S・ヒルトンの「真紅のマエストラ」という作品を読もうとしたけど、あまりのつまらなさに1/4くらいで挫折して、代わりにこの作品を読むことに。こちらはそこそこ面白かった。どちらもイギリスの女性作家のサスペンスで、映画化の話もあったという話題作なんだけど、「真紅~」のほうはどうしようもない駄作で、久しぶりに酷いハズレを引いてしまった。
今作は、女性が主人公のサイコスリラーで、ハンサムで素敵な恋人だと思っていた男性が、付き合い始めたら実はとんでもないDV男だとわかったけれど、生活を支配され別れることも出来ず、もう少しで殺されそうになるというストーリー。何とか救出されて生き延びたけれど、PTSDと強迫神経症に悩まされ、以前とは別人のようになって怯えて暮らしている。過去と現在を交互に語る手法で、過去の虐待の様子と、現在の、新しい恋人ができて少しずつ恐怖を克服していく過程を並行して書いている。(この手法で書かれた作品がやたら多くてちょっと食傷気味ではあるけど・・)DV男の仕打ちにはゾッとさせられるけれど、大きなどんでん返しがあるわけでもなく、割とあらすじそのままのストーリーで、ヒロインの恐怖だけで最後まで引っ張る感じだったから、ここまでの長さはいらなかったような気もする。ヒロインの心理描写は見事で恐怖が真に迫っていて、読み応えはあるけど、全体的には地味なストーリーだった。新しい恋人がとても優しくて、ヒロインが立ち直るのを助けてくれるので、ロマンス的な要素も少しある。でもDV男に虐待されるヒロインの話なら、B・A・パリスの「完璧な家」のほうが面白いかも。
- 作者:エリザベス ヘインズ,小田川 佳子
- 発売日: 2013/07/01
- メディア: Kindle版
- 作者:L・S・ヒルトン
- 発売日: 2017/01/24
- メディア: 文庫
原書はFifty shadesっぽいという評判で、面白いかなと思い読んでみたけど、これは駄作だわ。