ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

グッド・ガール メアリー・クビカ

 これも誘拐サスペンスだけど、「扉は今も閉ざされて」と比べるとたいして怖くなかった。話は似てるけど、この誘拐犯はむしろ良い人で一緒にいるうちにヒロインも彼を好きになってきて、ある意味ラブストーリーと言えるかも。ヒロインではなく、彼女の母親、事件を捜査する刑事、誘拐犯の3人の視点でストーリーが展開しているのが珍しい。犯人があまり怖くないぶんやや緊張感に欠け、サスペンスとしてはいまひとつという気がする。

 25歳の美術教師のヒロインは裕福な家庭の令嬢だけど、父親との間に確執があり家族関係に色々と問題がある。誘拐された娘を案じる母親のエピソードも多く、もともと夫と不仲だった母親が、娘の誘拐事件を担当している刑事を頼るうちにだんだん親密になっていき、自分の結婚生活を振り返って夫との関係を見つめ直したり、家族ドラマのような雰囲気もある。

 ヒロインが行方不明中のエピソードと発見された後のエピソードが交互に書かれていて、救出後のヒロインは記憶喪失で誘拐された時のことを覚えていないから終盤まで謎は解けない。最終的にヒロインが記憶を取り戻し真相がわかった時には驚かされ、なるほどと思ったけどそこまでの衝撃ではなかった。サスペンスの中に、親に理解されず孤独だったヒロインが愛する人を見つけるというテーマもあり、どちらかというと女性向けの作品だと思うけど(原書の刊行元が北米のMIRA BOOKSだし)それならいっそのこと、もう少しロマンス色を濃い目にしたら良かったんじゃないかと思う。この誘拐犯は極貧の母子家庭で育ち、病気の母親の治療費を稼ぐために悪の道に入ってしまったけど根っからの悪人ではなく、ちょっとハードボイルドすぎるけどロマンスのヒーローの素質がないこともない。ヒロインが誘拐犯を愛するようになるというのはストックホルム症候群に違いないと誰もが考えるだろうし、実際、最初のうちはそう思って読んでいたけど、最後まで読んで実は純愛だったとわかる。誘拐ものでは「扉は今も~」のほうがおすすめだけど、2作を読み比べてみるのも面白いと思う。

グッド・ガール (小学館文庫)

グッド・ガール (小学館文庫)