C・コールターは以前よく読んでいて、FBIシリーズは「幻影」まで、ヒストリカルはNight三部作、Star四部作、シャーブルックの花嫁シリーズを読んだ。ここ数年は遠ざかっていたけど、久しぶりに読んでみたら面白いな。
この作者のヒストリカルはかなり昔に書かれたものばかりだから、最近の作品にはない面白さがあると思う。いつも内容盛り沢山でやたらと波乱万丈で長いけど、説明的な描写は少なくセリフが多めでテンポが良いから意外とサクサク読めちゃうのよね。最近の下手な新人作家の生ぬるいヒストリカルより良いと思う。
この作品も翻訳が出たのは2014年だけど原書の刊行は1987年だから、今時の、ヒロインにメロメロなヒーローの甘々なロマンスとは一味違う。ヒーローが嫁を選ぶ基準がかなり腹立たしいし、結婚が決まった後も愛人と逢引きしてたりするし、ヒロインが美人だとわかった途端に態度が変わったり、女性に対してかなり失礼なヒーローで、今の読者にはあまり好まれないタイプかもしれないけど、そこが意外と面白かったりして。この作者は、ヒロインが虐待されたり、酷い目に遭う話をよく書いてるけど、昔はそういうロマンスが結構多かったんじゃないかと思う。このヒロインは威勢が良くて結構ヒーローと渡り合っていたからそこまで気の毒でもなかったけどちょっと可哀想だった。
父親に恩人の娘との結婚を急かされて、しぶしぶ3姉妹のうちの1人を選ぶために面接するヒーロー。3人とも美人だけど、次女のヒロインは結婚したくないから、眼鏡をかけみっともない服を着て不器量なふりをする。それでもなんだかんだで結婚することになって、最初は嫌々結婚生活を送っていたけど、ヒロインが実は美人なことがわかってヒーローが彼女に夢中になるという話。こう書くとヒーローが単純でしょうもない男みたいだけど、そこまで酷くなくて面白かった。領地で競争馬の繁殖をしていて馬がらみの事件で流血沙汰も起き、サスペンス的な展開も楽しめる。後半はヒーローが美人な妻にムラムラして、二人がイチャイチャするシーンがやたらと多くてしつこいくらいだった。それにしても、奥さんもちゃんと気持ちよくしてやれと愛人にアドバイスされて、それに従うヒーローって・・。書かれた当時はヒーローが愛人相手に種馬ぶりを発揮するのもありだったんだろうけど、今なら愛人とのベッドの描写は割愛するのが普通だろうね。まあ、この愛人さんは良い人で事件の解決に力を貸してくれて、最後にはヒロインと仲良くなるという不思議な役回りだったけど。
ヒーローに多少難があるけど、ヒロインの受ける屈辱が大きいぶんストーリーにインパクトがあって面白い。遡って古い作品がこんなにたくさん刊行されてる作家って、この人とアイリス・ジョハンセンくらいじゃないかな。うっとりしたり、感動する類のロマンスではないけど、勢いがあって最後まで楽しく読めた。シリーズの続きもそのうち読もうと思っている。
恋の訪れは魔法のように (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
- 作者:キャサリン・コールター
- 発売日: 2014/01/21
- メディア: 文庫