ロマンス小説感想日記

ロマンス小説感想日記

海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

眠れる美女のあやまち ジュード・デヴロー

 ジュード・デヴローの「時のかなたの恋人」が今月発売ということで、この作者のvillagebooksが出した古いのがずっと積読本になっていたのを思い出し、引っ張り出して読んでみたら・・・面白い!!今まで積みっぱなしにしててごめんなさい。

 1910年代のアメリカのお話で、ヒロインは裕福な農場主の娘。父親は労働者を安い賃金で劣悪な環境で働かせている悪徳経営者で、経済学者のヒーローは、労働者たちのために組合を組織するためにやってきてヒロインと出会う。労働搾取というシリアスなテーマを扱いながらも、ロマンスはとても楽しく、ヒーローとヒロインのユーモラスなやり取りには何度も笑わせられたし、お互いに惹かれながらも反発してばかりのじれったい2人にハラハラさせられるし、まさにロマンス小説のエッセンスが詰め込まれたストーリーだと思う。

 支配的な父親に厳しい家庭教師をつけられて、14歳からずっと世間と隔離された生活を送っているヒロインは、食べるものも着るものもバスルームを使う時間さえも決められた厳格なスケジュールに従って生活しているけれど、そんな生活が当たり前だと思っていて、自分がどれだけ自由を奪われているかに気付いていない。父親が勝手にその家庭教師を結婚相手に決めて婚約させられたのに、彼を愛していると思い込んでいる。ヒーローは、女好きなのが玉に瑕だけど、困っている女性を見ると助けずにいられない優しい男性で、ヒロインの状況を知るにつれ、そんな生活から救い出して人生の楽しみを教えてあげたいと思うようになる。ヒロインが、ヒーローと知り合って自分の生活に少しずつ疑問を抱くようになる過程がとても丁寧に描かれていて、彼女の戸惑いが伝わってくる。主役だけでなく脇役のキャラクターまでかなり考え抜かれていて、婚約者の男性がヒロインを厳しく教育して貞淑な女性にしようとするのも、生い立ちを考えると無理はないことだと思えるし、学校時代の同級生の女性が裕福なヒロインを妬むのも納得がいくし、この嫌な奴だけど憎みきれない2人のキャラクター造形が絶妙で、良い感じに主役カップルを引っ掻き回すところが本当に上手い。この作者は「時のかなたの恋人」が名作すぎるので他の作品が霞んでしまうけど、これも十分面白かった。450頁足らずで比較的短いけど中身の濃い作品だった。

 ちなみに「時のかなた~」は新潮文庫版のを昔読んでいて、古いブログに簡単な感想を書いていました。記事はこちら

無断転載禁止 copyright © 2018 BOOKWORM