ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

蝶のいた庭 ドット・ハチソン

 この作者はよくこんなおぞましい話を考えついたわね。ホラーに耐性のない人は読むのがキツいかも。でも帯の宣伝文句どおり読み始めたら止まらない、読者を引きつけて離さない吸引力があると思う。ゾッとするような方法で人が殺されたりするけど、その場面が具体的に描写されているわけではないので直接的なグロさはない。それでも内容の不気味さは相当なもので、むしろこれがホラー小説のあるべき姿かなと思う。究極のサスペンス!と書いてあるけど、普通の犯罪捜査ものとはちょっと違う。原書はGoodreadsのChoice Awardでホラー部門にノミネートされ僅差で受賞を逃していて、このジャンルではかなり評価の高い作者らしい。

 FBIによる誘拐事件の捜査の話だけど、あまりにも奇怪な事件で却って現実味がなく、ヤングアダルト向けのディストピア小説を読んでいるような感覚があった。16歳~21歳の若い女性の被害者が大勢いて、バタフライ・ガーデンの中で一種独特な秩序を形成していて、現実世界のディストピアみたいだなと。ヒロインは事件の被害者の1人で、救出されたところから始まって彼女がFBIに事件のあらましを語る形でストーリーが進行する。比較的淡々とした語り口で、特別起伏に富んでいるわけではないのにどんどん読ませるところがすごい。そういえば、少し前に読んだシェヴィー・スティーヴンスの「扉は今も閉ざされて」も、誘拐の被害者が事件後、精神科医に監禁されていた時のことを語る形でストーリーが展開していて、これと似たような手法だったな。どちらもサイコパスによる拉致、監禁、レイプを描いているけど、ドット・ハチソンのほうがより倒錯的で独特の雰囲気があり怖い。内容的に賛否両論ありそうだけど一読の価値はあると思うので、ホラーが大丈夫な方はぜひどうぞ。

蝶のいた庭 (創元推理文庫)

蝶のいた庭 (創元推理文庫)

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