ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

真夜中のキス リサ・マリー・ライス

 真夜中シリーズ10作目。自分の出生の秘密を知ったことで命を狙われるヒロインと彼女を守る元陸軍レンジャーのヒーローのロマンス。今作は国家の陰謀とかテロとかの壮大な話ではなく、個人的な犯行の比較的読みやすいサスペンスで、そういう意味ではシリーズ初期の作品に近いかもしれない。

 この作者はどちらかというと、ちょっとゴツいタイプのヒーローを書くことが多い気がするけど、このヒーローは珍しく映画スター並みに整った顔立ちのハンサム。主役カップルがお互いを称賛し合ってほとんど褒め殺し状態なのは毎度のことだけど、今回はハンサムでセクシーなヒーローにヒロインも涎が垂れそうなほどうっとりしてホルモン全開で、いつにも増して崇拝し合っている。ヒロインが “何て素敵な人かしら!こんなにハンサムなのに自分の容姿に無頓着でカッコつけたところがなくて自然体で・・・。” と絶賛すれば、ヒーローも “美人で頭が良くて逆境にも立ち向かう素晴らしい女性だ!こんなに細いのに肉も炭水化物も食べる!” と割とどうでもいいことまで褒めちぎっていて面白いわあ。

 それに加えてシリーズの最近の作品ではヒーローがAIS社がどれほど素晴らしい会社かを力説するのがルーティンになっていて、 “上司は素晴らしい人で精鋭揃いの同僚たちはみんな仲が良く、セクハラやパワハラとは無縁で、給料は破格だし福利厚生もバッチリ!オマケに社員にはもれなく美人の恋人や奥さんがついてくる!” みたいに絶賛していてあり得ないくらい素晴らしい会社になっているのが笑える。まあフィクションなんだから徹底的に理想を追求した究極の会社があっても良いわよね。凄い会社で働く素敵すぎるヒーローが夢のように美しいヒロインと熱烈な恋に落ちて命懸けで彼女を守るという、いつもながら現実離れしたロマンスだけど、ここでリアリティに欠ける・・とか言うのは野暮というもので、誇張気味な描写がマンガちっくで楽しいところがこの作者の持ち味だから、これくらい大げさなほうが面白いわよね。

 シリーズ初期の作品と比べるとHOTさは控えめだけど、この作者らしさは健在で、お互いにメロメロなカップルの甘々なロマンスが楽しかった。最近は人気のある作家でも翻訳を打ち切られてしまうことがよくあるけど、リサ・マリー・ライスはずっと刊行が続いていて有難い。これからも出し続けてくれますように。

 

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  このシリーズの最初の3作の原書はEllora's Caveというエロティック・ロマンス専門の出版社から刊行されたもので、かなりHotな内容だったけれど、少し間を置いて刊行された4作目からは別の出版社になり、作風も多少変わってHotさが若干控えめになっていたように思う。エロティックロマンスは一時期人気があったけれど、その後下火になってEllora's Caveも廃業してしまい、大手出版社もAvon RedやBerkley HeatとかのHotなロマンスのレーベルは縮小し、その手の作品はあまり出さなくなっていったらしい。この真夜中シリーズもそういう出版事情の影響を受けて、内容が変化していったんじゃないかと思う。最近は作家が自費出版するのが流行りだから、このシリーズも最新の3作は作者の自費出版になってる。出版元の変遷が、刊行時の出版のトレンドを反映しているのが興味深いと思う。(マニアックな話なので畳んでおきました。)

 

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