D・レヴィサンはLGBTをテーマにした作品を多く書いているそこそこ有名なYA作家で、「エヴリデイ」は映画化もされている。
私はゲイのロマンスにそれほど関心があるわけではないけれど、YA小説でLGBTを扱ったものならいくつか読んだことがあり、その1つがジョン・グリーンとデイヴィッド・レヴィサンの共著の「ウィル・グレイソン、ウィル・グレイソン」で、タイトルどおり同姓同名の2人の男の子の物語。一人は好きな女の子に告白できずに悩んでいるストレートのウィル・グレイソン、もう一人は鬱病を患っているゲイのウィル・グレイソンで、ストレートのウィルのパートをジョン・グリーンが書いて、ゲイのウィルのパートをデイヴィッド・レヴィサンが書いている。ストーリー自体はジョン・グリーンにしてはいまひとつという気がしたけど、ゲイのウィルのキャラクターが良かった。屈折した性格だけど傷つきやすい繊細なところがあり、ネット上で知り合った男の子に恋するエピソードが切なくて泣けた。それでD・レヴィサンという作家にちょっと興味がわいて、今回、単独で書いてる「エヴリデイ」読んでみたというわけ。
前置きが長くなったけれど、「エヴリデイ」はSF風のストーリーで、毎朝違う人間に憑依して目を覚ますという不思議な存在"A"が主人公。自分の肉体を持たないAがある女の子に恋するのだけれど、人間ではなく霊みたいなものだからロマンスが実るはずもなく切ない。Aに性別はなく男にも女にも憑依するので、そこにLGBT的な要素が多少あるけれど、人間の本質とは何かというのがこの作品のテーマなんだと思う。YA小説だから無理やりハッピーエンドになるのかと思ったけどそうではなく、ちょっと悲しい結末だった。SFやファンタジーが好きな人なら面白いと思う。一風変わったストーリーで悪くはないけど自分の好みとは少し違ったかな。小説より映画で見たほうが面白いかもね。
ところでLGBTと言えば、以前、このブログにGoodreads Choice Awardのロマンス部門でゲイのロマンスが一位になっていて面白そうだけど翻訳は出ないだろうなあと書いた「赤と白とロイヤルブルー」が刊行されることになってビックリ。最近海外ではLGBTのロマンスも一般化していてベストセラーになる作品も多いから、ゲイのロマンスが日本で刊行されても驚くことではないけど、モノクローム・ロマンス文庫?みたいなところじゃなく、普通のロマンス小説を出している二見文庫からゲイのロマンスが出るということには結構大きな意味があるんじゃないかと思う。
- 作者:レヴィサン,デイヴィッド
- 発売日: 2018/09/10
- メディア: 単行本
ウィル・グレイソン、ウィル・グレイソン (STAMP BOOKS)
- 作者:ジョン・グリーン,デイヴィッド・レヴィサン
- 発売日: 2017/03/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)