ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

戦場のアリス ケイト・クイン

 戦時下の女スパイの活躍を描いたヒストリカル・フィクション。本の雑誌が選ぶ文庫ベストテンの1位になった話題作らしい。

 戦争中に行方不明になったフランス人の従姉を探しているアメリカの女子大生シャーリーが、手掛かりを追ううちに第一次大戦中にスパイとして働いていたイギリス人の中年女性イヴと知り合い、一緒に行動するうちに友情が芽生えていくという内容で、シャーリーとイヴの話が交互に書かれている。最初はストーリーの進行がゆっくりで、スパイものにしてはやや地味な印象を受けたけれど、イヴがスパイとして活躍していた話になると俄然面白くなってきた。彼女のスパイとしての人生は壮絶で、憎んでいる敵の愛人になってベッドで情報を聞き出すとか凄すぎる。バレたら殺されるので一瞬も気が抜けない。イヴの話がものすごいインパクトだったので、シャーリーのパートが退屈に感じるほどだった。イヴのストーリーだけにしてもう少し短くまとめても良かった気がするけど、シャーリーの従姉の失踪が2人の人生を結び付け、最後にイヴの宿敵に行き着く流れになっているのは上手いと思った。スパイものだけど難解さはなく読みやすいし、ロマンスもあり女性が共感しやすい内容になっている。スパイの任務のために命を懸けていた女性たちの勇気ある行動に心を打たれる印象的なストーリーは一読の価値があると思う。

 このジャンルは最近あまり読んでなかったけど、昔はケン・フォレットのスパイものが割と好きで読んでいた。男性作家だけど女スパイの話を多く書いていて、ロマンスもあり面白かった覚えがある。読んだのがかなり昔なので細かいことは忘れてしまったけど、スピード感のあるスリル満点の展開は、この分野を代表する大物作家だけのことはある。スパイものならK・フォレットもおすすめです。

戦場のアリス (ハーパーBOOKS)

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