面白いサスペンスだった。これを楽しめるかどうかは、この反則的なオチを許せるか否かで決まると思うので、人によっては何だこりゃと思うかもしれないけれど、斬新だし、これはこれでありだと思う。Netflixでドラマ化されているけど、ネタバレを見てしまうと読書の楽しみが損なわれてしまうので、小説を読むならドラマを見る前のほうがいいと思う。
ヒロインはシングルマザーで、精神科のクリニックで秘書をしている。新しい上司が来たと思ったら、なんと前夜にバーで口説いてきた男だった。しかも既婚者だとわかったけれど、彼に惹かれる気持ちを抑えられず不倫の泥沼に嵌っていく。そしてあろうことか、彼の奥さんとも仲良くなり、不倫していることをひた隠しにして友達づきあいをすることに。そうこうするうちに、この夫婦が何やら深刻な問題を抱えているらしいことがわかってきて・・・というストーリー。最初のうちは、不倫とかドロドロした昼メロみたいな展開で何だかなあと思いながら読んでいたけど、だんだんサイコスリラーっぽくなって面白くなってきた。簡単に罠に嵌ってしまう愚かなヒロインにイラつくけど、だからこそハラハラさせられ、どんどんページをめくってしまう。2人の結婚の裏には良からぬ事情があり、そのへんはだいたい予想通りなんだけれど、そこからまた一捻りあって心底ぞっとするような結末が待っている。これは怖いわ。サスペンスというよりホラーのような怖さだけど、この驚きの結末は(賛否両論あるとは思うけど)読んで損はないと思う。
最初に原書のタイトルを見たとき、所謂"ガール・ミステリー"なのにgirl / woman / wifeというキーワードが入ってなくて珍しいなと思ったけど、最後まで読むと"Behind Her Eyes"がまさに内容を表わしているけど、最後まで読んでやっと意味がわかる良く出来たタイトルだとわかり、なるほどと思った。翻訳も読みやすいし(むしろ文章が砕け過ぎてて、個人的にはもう少し硬い文章でもいいと思う)頁数は多めだけどサクサク読めてあまり長さを感じないので、このジャンルをあまり読まない方にもおススメです。