ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

完璧すぎる結婚 グリア・ヘンドリックス & サラ・ペッカネン

 面白かった。読み始めたら止まらず寝不足になった。でも宣伝文句の「ゴーン・ガール以来、最高の心理スリラー」というのはちょっと褒めすぎかな。これは予備知識のない状態で読んだほうが楽しめる作品だと思うので、以下なるべくネタバレしないよう気を付けていますが、多少は内容に触れているのでご注意を。

 なるほど、確かに読者を驚かせる巧妙な仕掛けが散りばめられていて、トリッキーなストーリーが良く出来ていたけど、私はゴーン・ガール以降この手のミステリーをたくさん読みすぎて慣れてしまっているから、そこまでの衝撃はなかったけど、このジャンルをあまり読まない人ならきっと驚くと思う。ストーリーは「ガール・オン・ザ・トレイン」に近いけど、殺人とか残虐な事件は起きないのでそれほど恐怖感はなく、どんでん返しについては、この類のトリックは以前アリス・フィーニーの「ときどき私は嘘をつく」や、クレア・マッキントッシュの「その手を離すのは、私」でもあったので、最近多いパターンだなと思いながら読んでいた。それでもヒロインがモラハラ夫にじわじわと追い詰められていく心理がリアルに描かれていて引き込まれたし、夫が妻を操ろうとする巧妙な手口が恐ろしく、緊張感のある展開が良かった。

 グリア・ヘンドリックスは元々は編集者だったそうで、担当していた作家のサラ・ペッカネンと組んで小説を書いたら大ヒットしてベストセラーになったらしい。心理描写が真に迫っていたし、ストーリーの構成も上手いと思った。そこまでのオリジナリティはないけれど、色んなガール・ミステリーのヒット作の要素を取り入れて、うまくストーリーを作っていて、600ページ越えの長編を飽きることなく読ませる手腕はなかなかだと思う。

 この手のサイコ・スリラーは、ゾッとするような終わり方のイヤミスが多いけど、これはそこまで怖くないし、ヒロインが陥ってしまった恐ろしい状況から脱するために奮闘し、最後に恐怖を克服する結末は清々しくて読後感も良い。ロマンス小説が好きな女性の層にも受けそうな内容だと思う。

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