ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

塔の上の婚約者 ジョアンナ・リンジー

 中世のハイランダーものはそれほど好きではないけれど、J・リンジーは割と好きな作家なので読んでみた。原書は1984年刊行のかなり古い作品。80年代に書かれたヒストリカル・ロマンスだとbodice-ripper的なものが結構多かったりするけど、これはそうでもなく、ヒーローはヒロインにメロメロで、皆に恐れられているハイランダーの氏族長にしては女性に優しく、最近の作品と比べてもあまり違和感なく読める内容だった。個人的にはフェミニズムの逆を行くような昔のヒストリカル・ロマンスもそれはそれで面白いと思うけど。

 ヒロインはこの作者らしい気の強いタイプで、ビンタされたら叩き返すような威勢のいい女性。絶世の美女で、ヒーローは彼女が川で水浴びしているところを見て一目惚れ。素性を知らないまま恋に落ちるけど、実は敵対する氏族の娘だった。ストーリーもいつものジョアンナ・リンジーという感じで波乱万丈。城を追い出され、見知らぬ男性にさらわれ災難続きの気の毒なヒロインだけど、ドタバタした展開であまり悲壮感はない。美人すぎるせいで男性に襲われかけたりしてもなんとか無傷で済むし、いつもすんでのところで難を逃れるやたらと強運なヒロインが笑える。作中、ヒーローがヒロインにハンドファストというお試し結婚(?)みたいな婚約を提案していたけど、確かにこれって男性に都合良すぎで女性にほとんどメリットがない制度だな。こんな制度が中世にあったなんて初めて知った。なかなか興味深いな。

 強情な2人が衝突し合いながら恋に落ちるロマンスで、若干ヒーローの迫り方が強引なところが昔っぽいけどそれも楽しく、退屈する暇なく次々と問題が起きて飽きさせないストーリーが良かった。J・リンジーは新し目のよりも昔の作品のほうが勢いがあって面白いかも。

 mirabooksは最近、以前villagebooksが出していたお菓子探偵ハンナのシリーズを出すようになったし、リンダ・ハワードのウエスタン・ロマンスの3部作も再販するみたいだから、ついでにJ・リンジーのマロリー一族シリーズの続きも出してくれるといいのに。villagebooksは面白い作家を沢山出していたのに翻訳小説の刊行を縮小してしまい、楽しみにしていたシリーズの続きが読めなくなってしまったから、mirabooksがスーザン・ブロックマンとパメラ・クレアを引き取って続きを出してくれたら嬉しいんだけどなあ。

塔の上の婚約者 (mirabooks)

塔の上の婚約者 (mirabooks)

 

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