ミア・シェリダンは泣けるロマンスで定評のある人気作家で「世界で一番美しい声」も良かったので新作を読むのを楽しみにしていた。期待を裏切らない感動作だったわ。若い2人の純粋な恋が切なくて泣ける。こういうのが読みたかったのよね。
田舎町の貧困問題という重いテーマを扱っているけれど、若い世代向けのロマンスなので青春ものらしい爽やかさもあり、そこまで暗くなく読みやすい。途中かなり辛い状況になっても最終的には恋が実るハッピーエンドのロマンス小説なので、読み終わった後は幸せな気分になれるし、若いカップルのロマンスだけど、そこまで子供っぽいキャラクターではないので大人の読者も十分楽しめると思う。一応18歳以上向けなので適度なHotさもあるし。
ヒーローもヒロインも貧しい田舎町で育ち、毎日の食べ物にも事欠くような生活をしていて、唯一の希望は高校で一番の成績を取った者に与えられる奨学金で大学へ行き、貧困生活から抜け出すこと。辛い日々を送るなかで知り合い恋に落ちるけれど、奨学金を貰えるのは1人だけ。これは苦しい。お互いに相手の苦しい生活を知っているだけに、葛藤する2人の心情が胸に迫ってきて泣ける。貧困問題はとても切実で、高校生なのにこれほどの苦労を背負っているのが不憫すぎるけど、そんな生活の中で、お互いがいれば他には何もいらないと思えるような激しい恋に落ちた2人のひたむきさに感動せずにいられない。まだ若いのにヒロインにあそこまで尽くせるなんて、ここまで献身的なヒーローはそういないと思うわ。そんな彼が愛するがゆえの行動で彼女を傷つけてしまい、お互いに苦しむところとか、悶えながら読んだわよ。切ないわぁ。これぞロマンスの真髄よね。
貧困と戦いながら懸命に生きている若いカップルの感動的なロマンスで、コリーン・フーヴァーとかが好きな人におすすめだと思う。最近はロマンス小説を出す出版社が減ってしまったけれど、扶桑社は絶妙なチョイスで面白い作品を出してくれて有難いわ。これからも期待してます!
- 作者:ミア・シェリダン
- 発売日: 2021/04/29
- メディア: 文庫
アメリカは日本よりも格差社会で、貧しい家庭に生まれるとそこから這い上がるのが難しいと思う。大学進学率が高いだけに高卒ではなかなか良い仕事に就けないけれど、大学の学費が本当に高いのよね。たぶん州立大学でも4年間で日本円で1000万円くらいはするんじゃないかな。アメリカに比べたら日本はまだ平等な国だと思う。