ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

渇きと偽り ジェイン・ハーパー

 オーストラリアの作家のデビュー作で、色んなミステリーの賞を受賞してイギリスやアメリカでもベストセラーになっている。読んで納得。オーソドックスなミステリーで派手なトリックはないけれど、干ばつに苦しむオーストラリアの田舎町が舞台のストーリーには独特の雰囲気があって面白かった。

 主人公のアーロン・フォークは30代半ばの男性で、都会で連邦捜査官として働いているけれど旧友の葬儀のために20年ぶりに故郷に戻ってくる。その旧友は妻と子供を銃殺した後に自殺したらしい。彼の両親に事件の真相を調べてほしいと言われ、地元の警官と協力して捜査することに。高校時代に仲の良かった女の子が川で溺死し、その事件のせいで心に傷を抱えているアーロンの複雑なキャラクターが良かった。苦い思い出しかない故郷に帰ってきて過去と向き合う姿に哀愁が漂っていて人間味を感じた。キャラクターの描写が丁寧で、高校時代のアーロンの友情や淡い恋心を繊細に描いているところが女性作家らしくて良いと思った。

 読んでいてタナ・フレンチの「悪意の森」と少し似ているように感じたけど、T・フレンチの主人公は繊細を通り越して情けないキャラだったのに対し、本作の主人公はものすごく優秀というわけではないけど適度に有能だし、過去を悔やんでいるけど、そこまで後ろ向きじゃなく好感が持てる。「悪意の森」の壊れかけの主人公もあれはあれで面白いし、T・フレンチ独特の緻密すぎる心理描写が好きな人もいるだろうけど、全体的にはJ・ハーパーのほうが読みやすくて万人に受ける作風だと思う。

 新人らしからぬ上手さで、オーストラリアの僻地の町の雰囲気を見事に表現していて、その閉鎖的な町で起きた悲劇的な事件は、都会のシリアルキラーものとは違い、動機を考えつつ犯人を推理するご近所ミステリー的な面白さがあった。地道な捜査の末に驚きの真相に辿り着く手堅い展開は、派手さはないけれど昔ながらのミステリーの醍醐味を味わえると思う。リアーン・モリアーティといい、ジェイン・ハーパーといい、最近のオーストラリアの作家はなかなか侮れないなあ。

渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

The Dry (English Edition)

The Dry (English Edition)

  • 作者:Harper, Jane

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