ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

ナイチンゲール クリスティン・ハナ

 この作者もアメリカではものすごく売れていて、Goodreads Choice Awardを2回も受賞している人気作家だから、日本でももっと売れても良さそうなものだけど、中身にそぐわない装丁のせいで読者を逃してしまったと思う。この表紙は無いわ。(このイラストとタイトルだと子供向けの伝記か何かだと思っちゃうよねぇ・・。)内容は、戦時下の女性たちの奮闘を描いた女性向けヒストリカル・フィクションで、前に読んだケイト・クインの「戦場のアリス」と同系列の作品。(そういえば訳者も同じだ。加藤洋子さんてリンダ・ハワードを翻訳してる人だよね。)

 読んでみると評判通りの大作で涙なくしては読めない感動ものだった。第二次世界大戦でナチの支配下に置かれたフランスが舞台の物語で、性格の全く違う2人の姉妹がそれぞれ戦争に向き合い成長する姿を描いている。穏やかな性格の姉は、夫に頼っているか弱い女性だったけれど、夫が出征していなくなり、自分の身を犠牲にして子供を必死で守ろうとする。姉と10歳違いの妹は向こう見ずな性格で、ナチの支配に反発しレジスタンスの活動に加わり、連合国軍の航空兵がフランスから出られるよう逃亡ルートを確保するのに奔走する。戦争中の話なので残酷な描写もあって重い内容だけど、女性の作家が書いた女性向けフィクションなので、姉妹愛、親子愛、夫婦愛等、人間ドラマが感動的で、戦時下で力強く生きた女性達の姿を活き活きと描写していて良かったと思う。

 これもディーリア・オーエンズと同じく、アメリカでそれほど売れたなら面白いのかなと思って読んでみたもので、戦争の話はちょっと気が滅入るけど感動作なのは確かだと思う。女性の視点で書かれていて共感しやすいし、戦争ものでも軍事的な面ではなく人間ドラマが主体で読みやすく、翻訳も良かったのでサクサク読めた。表紙のせいであまり日の目を見ていない作品だと思うので紹介しておきます。 

ナイチンゲール 下

ナイチンゲール 下

The Nightingale

The Nightingale

  • Hannah, Kristin
  • St. Martin's Press

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