この作者もどちらかと言うとワンパターンな作家だけど、本作は、これ前に読んだっけ?と思わず確認してしまうほど既視感のある話だった。2018年発売でそれほど古くないから過去に読んでいないことは間違いないのだけど、この作者にありがちな、田舎町に住んでいるヒッピー風の変わり者ヒロインに、一族のはみ出し者で経営コンサルタントのヒーロー、ヒロインが何者かに脅迫されるサスペンス・・という設定は、どこかで読んだ気がする要素の詰め合わせという感じ。だからこの邦題なのか??と勘ぐってしまったわ。実際、ちょっと前に読んだこの作者の「眠れない夜の秘密」も似たようなストーリーだった気がするけど、ワンパターンでも楽しく読めたから良しとしよう。
原書は1993年刊行の初期作なので、多少内容が古く感じるところもあったけど面白かった。誰も携帯電話を持ってないし、通販の手段がインターネットでなくカタログ販売というのに時代を感じたけど、この作者はミステリーも人情味があり、どちらかというとアナログな感じの作風なので、時代設定が90年代頃のほうが合っている気がする。ヒロインは多少抜けてるところがあるけど優しくて可愛い女性だし、複雑な生い立ちで影のあるヒーローも素敵だった。孤独なヒーローがヒロインの愛で癒されるというのはロマンス小説の定番だけどやはり良いわね。ヒロインが住んでいる町の住民たちも変人揃いなのがこの作者らしくて笑えた。ヒーロー一族の確執がなかなかで脅迫事件の顛末も面白く、ロマンスも謎解きも楽しい作品だった。