ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

わたしがわたしであるために E・ロックハート

 ヤングアダルト向けのサスペンス。心に闇を抱えたアンチヒロインの物語で、女性版「リプリー」という感じ。実際、作者は影響を受けた作品として「リプリー」や「大いなる遺産」を挙げている。現在から過去へ時系列を遡る手法で描かれたサスペンスは良く出来ていて上手いと思うけど、このヒロインにはあまり魅力を感じられなかったなあ。帯に“衝撃のラスト”という宣伝文句が書かれているけど、そこまですごいどんでん返しはなかった。主要な登場人物が大学生くらいの年代で、それほど子供っぽい内容でもないので、YA小説というより普通のサスペンスとして読める。

 サイコパスなのになぜか魅力があって共感を覚えるような主人公だったら面白いんだけど、本作のヒロインにはそういう魅力が欠けているように思う。主役も脇役も含め、好感の持てるキャラクターがいない。ジュールとイモジェンという2人の若い女性がいて、どちらも孤児なのに対照的な人生を送っているというのは興味深いけど、2人ともあまり好きになれないタイプで、どちらにも肩入れ出来ないから読んでいてちょっと味気ない。ストーリーの構成は上手く、章ごとにだんだん過去に遡り事実が明らかになっていくサスペンスは、普通ならややこしく感じそうなものだけど上手く書かれていてとても読みやすかった。展開が良いだけにキャラクターが残念。

 それでも見所のある作家だと思うので、他の作品が翻訳されることがあったら読んでみたいと思う。実際、この作者の前作“We Were Liars”のほうが色んな賞を受賞してベストセラーになっていて面白そうなのに、そっちは未訳なのよね。

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