ゴールデン・グローブ賞も受賞したNetflixの大ヒットドラマの原作小説。孤児の少女がチェスの世界でトップを目指して上りつめていく姿を描いている。チェスの対局を文章で書かれてもよくわからないから、小説を読むよりドラマを見たほうが理解しやすいかなと思ったけれど、読んでみるとチェスのことがわからなくても十分楽しめる内容で面白かった。ドラマがヒットしたのも納得。今度見てみよう。
8歳で母親が亡くなり孤児院に入れられたヒロインは、用務員のおじさんがチェスをしているのを見て興味を持ち、彼に教わって凄い才能を発揮するようになる。孤児院では、子供たちをおとなしくさせておくために精神安定剤を与えていて、慣れない孤児院での生活に不安を感じていたヒロインは薬に依存するようになっていく。孤児院で小さな子供にも精神安定剤を配っているというのが衝撃的だったけど、1960年代の話なので、当時はそういうことも見過ごされていたんだろうね。12歳で養子にもらわれ、養母がチェスの大会に連れて行ってくれるようになり、どんどん勝ち進んでいくけれど、薬への依存は相変わらずで、そのうちアルコールにも溺れるようになる。壮絶な人生だけど、チェスへの情熱は衰えることなく、勝ちたいという執念がすごいと思った。対局の前にはものすごく勉強して対戦相手のことを研究するのね。対局の時の緊張感や、勝った時の高揚感が読んでいてすごく伝わってきて話に引き込まれた。
チェスに関しては天才だけど私生活は荒れていて、今にも崩壊しそうな危なっかしいヒロインのキャラクターがとてもリアルだった。チェスだけが生きがいの孤独な人生を送る女性の生き様を描いていて、ありきたりのサクセスストーリーではないところが面白いと思う。