ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

催眠 ラーシュ・ケプレル

 ラーシュ・ケプレルはスウェーデンのミステリー小説界ではかなり人気のある作家らしい。扶桑社から出ている最新作の「つけ狙う者」が目に留まったんだけど、シリーズものだったのでまずは1作目の「催眠」の古本を入手して読んでみた。上下巻で900頁越えの大作だけど読み始めたら止まらない面白さだわ。

 これはスウェーデン国家警察のヨーナ・リンナ警部が活躍するシリーズだけど、本作では医師で"催眠"のスペシャリストのエリックのほうが主役という気がした。一家惨殺事件の捜査のためにリンナ警部がエリックに依頼して被害者に催眠をかけてもらったところ意外な事実が判明して・・・というストーリー。事件の凄惨さと驚愕の展開に圧倒された。 

 この作者は覆面作家としてデビューして、当時は素性不明だったけど、後にそれぞれ単独で文芸小説を書いている夫婦の共作だということが明らかになったらしい。純文学の作家だったらこれは匿名にしたいと思ったのも納得だわ。高尚な文学とは対極の、まさに大衆向けの娯楽小説って感じだもん。残虐な事件をスリルたっぷりに書いていて、リアリティよりもエンタメ性重視という感じなので多少ツッコミどころはあるけれど、スピード感のある展開でどんどん読ませる勢いのあるストーリーだった。エリック医師と妻との夫婦のゴタゴタは、浮気相手との情事の場面までねちっこく描写していてドロドロした昼メロみたいだけど、そういうちょっと下品なところもそれはそれで面白いと思う。

 あとがきによれば、原文は「独特の美しい比喩を駆使したきめ細かい描写が印象的」らしいけど、あまりそういう感じはしなかった。むしろ高尚さは捨てて大衆向けにひたすら読みやすく書いたのかなと思った。まあ残酷な描写に度肝を抜かれてあまり文章の細かいところに着目している余裕はなかったけど。登場人物が割と多めだけど混乱することもなくとても読みやすくてあまり長さを感じなかった。

 ミステリーで、精神科医が催眠で記憶を呼び起こしたりする話は幾つか読んだけど、ちょっと胡散臭い感じがするものの興味深いテーマだと思う。この作品は催眠を大々的に扱って衝撃的なストーリーに仕立てているので、若干荒唐無稽なところもフィクションだと割り切って読めばかなり面白いミステリーだと思う。

映画化されていてprime videoで見られますが評価はイマイチみたい。

 

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