ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

衝動 アシュリー・オードレイン

 あらすじを読んだ限りではあまり面白そうに思えなかったんだけど、原書は高評価で、Amazon.com2021年上半期のBest Mystery Top20にも入っていたので読んでみると、育児をテーマにした心理スリラーという新しい切り口のサスペンスで意外と面白かった。以下、多少のネタバレあるかも。

 これも最近多い「信頼できない語り手」のサスペンスで、主人公のブライス育児ノイローゼで精神的にかなり参っている。彼女の一族の女性たちは伝統的に子育てに問題を抱えていて、精神を病んでいた祖母は自分の子供を虐待していたし、母親は育児放棄の末、夫と子供を置いて出て行ってしまうような人だった。そんな母親に育てられた自分が子供を愛せるだろうかと不安を抱えながら子育てしているブライスがどんどん追い詰められていく様子が迫真の描写で書かれていた。育児ノイローゼの母親のモノローグをずっと読まされたら嫌になりそうなものだけど、自分の子供に猟奇性を見出してパニクるブライスの心理描写がリアルで引き込まれた。1つ1つの章が短く、テンポよく話が展開するので読みやすい。出産、育児の大変さや理解のない夫へのいらだちは、子育ての経験のある人なら共感できると思う。この手の心理スリラーはたいていすごいトリックやどんでん返しがあるものだけど、そういうのはあまりなかった。でも意味深なエンディングで恐怖感を煽っていたのは上手いと思う。結局のところブライスも誇大妄想気味なので、どこまでが真実か実際のところはわからず、様々な解釈の仕方があると思う。

 自分の産んだ子供がサイコパスだったらという恐怖を描いたサスペンスだけど、子供を虐待してしまう女性たちのドラマでもある興味深いストーリーで、虐待に関しては事実を淡々と述べているような感じで、人を裁いたりはせず感傷的になりすぎることもなく書かれていて真実味があり、色々と考えさせられる内容だと思う。

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