2018年のRITA賞受賞作。A・ストロームはこれが初邦訳で、本国でもそこまで知名度の高い作家ではなさそうだけど、読んだ後に心がほっこりするような素敵なロマンスで、なかなかの良作だった。
書店を経営しているメガネっ子のヒロインは読書オタクで地味なタイプ。美人で活動的な姉の影のような存在で、好きになった男の子が姉に夢中になってしまって振られたことも何度かあったりする気の毒な役回りだけど、夢見がちな性格の可愛い女性だった。ヒーローは根っからのアウトドア派で、ヒロインの姉とともにトレッキングガイドの会社を経営している。性格もライフスタイルも相容れない二人が実はお互いに惹かれあっていて・・・という楽しいラブコメだけど、途中予想外のシリアスなエピソードにしんみりさせられたり、ストーリーの展開が上手くて引き込まれたし、楽しいだけでなく深いものがありとても良かった。
ヒロインが27歳でヒーローが30歳位という比較的若い二人が主人公で、ドロドロしたところがなく爽やかなストーリーは読後感も良く素直に楽しめる。正反対の二人が惹かれあうという定番のテーマながら、うまくまとめて素敵なロマンスに仕上がっていると思う。文学好きのヒロインが「赤毛のアン」や「シラノ・ド・ベルジュラック」について語るところも良かった。「赤毛のアン」なら大抵の人は読んでいると思うから多くの人が共感できると思う。
最近ミステリーばかり読んでいたけど、こういうのを読むとやっぱりロマンス小説って良いなあと思うわね。この作家は掘り出し物だわ。