ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

ザ・サン 罪の息子 ジョー・ネスボ

 ジョー・ネスボノルウェー人だけど、ほとんど全ての著書が英訳されていて世界中で人気がある北欧ミステリーの大物作家。少し前に中編の「その雪と血を」を読んだので、今度はノンシリーズの長編「ザ・サン」を読んでみた。

 警官だった父親が殺された事件の後、麻薬に溺れ投獄された青年の壮絶な復讐の物語で、巻頭の人物紹介が2ページに渡るくらい登場人物が多くストーリーも複雑だけど、難解に感じることはなく読みやすかった。人気作家だけのことはあって上手い。北欧ミステリらしい凄惨なストーリーで主人公がどんどん人を殺していくので、ノワール系が苦手な自分にとっては残虐すぎるように感じるところもあったけど、スピーディーな展開に引き込まれ夢中になって読んでいた。それにしても警察がこんなに汚職警官だらけだったら恐すぎる。

 主人公のサニーは高校時代はレスリングの選手で成績優秀な人気者だったけれど、父親が汚職の罪を告白して自殺したことで人生を狂わされ、麻薬で身を持ち崩して刑務所に入れられたけれど、父親が誰かに陥れられたことを知り、脱獄して関係者を探し出し復讐を果たしていく。18歳から30歳までずっと刑務所で過ごしたため、投獄された時点から年をとっていないような不思議な純粋さがあり、残虐な殺人者なのにどこか憎めないキャラクターだった。

 ストーリーも良く出来ているしハードボイルド系が好きな人には最高に面白い作品だと思うけど、私は女で感傷的なのが好きなので、サニーの心理をもっと掘り下げて書いてくれたら、彼に共感して泣けたのに・・と思ってしまった。サニーはなかなか魅力的なキャラクターで、父親の自殺で順風満帆だった人生が崩れ去ってしまったことは悲劇としか言いようがなく同情を禁じ得ないのだけれど、彼の心理描写はほとんどなくドライな筆致で書かれているので感情移入するようなことはあまりなかった。それでも彼がが麻薬中毒者のための居住施設の管理をしている女性に恋して彼女に愛を告白するところは素敵だったと思う。自分の好みとしてはもう少し人間ドラマ的なものが多く盛り込まれているほうが好きだけど、そういうのは少数派の意見だろうね。

 警察内の裏切り者が誰なのかわからず最後までハラハラしながら読んでいたけど、明らかになった事実には驚いた。事件の幕切れは悲しすぎたけど、こういう結末も良いと思う。

 

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