ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル

 ヴェルーヴェン警部三部作の1作目。2、3作目を先に読んでいるので結末はある程度わかっているんだけど、それでも面白かった。

 有名なミステリ作品のタイトルが色々出てきて、ミステリ通の人がニヤリとしそうなマニアックなストーリーだけど、それらの作品を知らなくても全然問題ないし、むしろ興味深く読めると思う。(ちなみに私は「ブラック・ダリア」も「アメリカン・サイコ」も原作は読んでいないけど映画は昔見た。)これが作者のデビュー作とのことで、若干展開がまどろっこしいところもあったけど、終盤に驚くべきトリックがあり、なかなかの衝撃だった。最後に読者を唖然とさせる見事な構成が流石だと思った。

 ストーリーも面白いけど、やはりキャラクターが良いわ。主役のヴェルーヴェン警部が、この手の警察小説の主役にしては本当に繊細で、涙もろくてすぐ泣くし、奥さんのことを幸せにできているだろうかと自問するところとか、自分のことを禿の小男と言う自虐的なところも好きだわ。だから奥さんのイレーヌが死んじゃうのが本当に気の毒で、これも虚構の一部だったら良かったのにと思わずにいられない。このシリーズはどれもかなりショッキングな事件を扱っていて、スプラッターな描写も多く残虐だけど、何より結末が残酷で重いのよね。まあ、そこがこの作者らしくて良いんだけど。

 

 続けて番外編の「わが母なるロージー」も読んだのでついでに感想を。200頁ちょっとしかなくて短いのでそれほどすごいトリックがあるわけではないけれど、最後まで緊張感のある展開で面白かった。部下のルイの有能ぶりが素晴らしい。こんな部下のいる警部が羨ましいわ。長編と比べると物足りないけど、中編にしては読みごたえのあるストーリーで良かった。これでシリーズ全部読み終えてしまったのでちょっと寂しい。もっと読みたいから新しいの書いてくれないかしら。警部が幸せになる話を読みたいわ。

 

 

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