ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

ピルグリム テリー・ヘイズ

 3巻で合計1200頁もある大作なので、なかなか手をつけられずに長いこと積んでいたけれど、一旦読み始めたら夢中になり、読み終えるのが惜しくなるほど面白かった。これだけのボリュームで冗長さを感じさせないのは凄いと思う。

 作者はジャーナリストとして活躍した後、脚本家になり有名な映画を何本も手掛け、この作品で小説デビューしたとのこと。長くても読みやすく、エンタメ性の高いストーリーで、このまま映画に出来そうな内容だった。(脚本家だし映画化も意識して書いていたのだろうけど。)

 アメリカ政府の秘密機関で諜報員として働いていた主人公は、911のテロの後、燃え尽きて辞職し普通の人生を歩もうとしていた。ところがアメリカに対するバイオテロの計画があることが判明し、それを阻止するために呼び戻されテロリストを追跡することに。

 主人公の視点で書かれていて、淡々とした語り口ながら諜報員の苦悩や孤独が伝わってきた。駆け出しの頃、任務に失敗し仲間を死なせてしまった悲しみや、孤児だった彼を引き取り育ててくれた養父への思いは胸に迫るものがあり、ベタなエピソードだと思いつつも泣かされた。テロリストもまた一人の人間として書かれていて、不幸な生い立ちからアメリカを憎むようになる過程には説得力があった。

 正体不明のテロリストをわずかな手がかりを元に探し出さなければならず、タイムリミットが迫る中、世界を駆け回って必死で捜査する主人公を応援せずにいられない。敵も単独でテロを計画するほど頭が切れてカリスマ性のある人物なので一筋縄ではいかず、2人の攻防を手に汗握りつつ読んでいた。主人公が能力高すぎて人間離れしている気はするけれど、命がけで世界を救うヒーローというのはやっぱりカッコよくて惚れ惚れするわ。スパイものとしては屈指の出来で、読まずにおくのはもったいない傑作だと思う。

 これは欧米で大ベストセラーになったヒット作で、そういう作品には当然アンチ派もいて「これはアメリカのプロパガンダ小説だ」みたいな批判もあったらしい。まあ、確かにちょっとアメリカという国を誇大宣伝しているきらいはあるように思う。色んな国を舞台にストーリーが繰り広げられているけれど、トルコとかもかなり酷い国のように書かれていて、作者にジャーナリストの経歴があるにしては、欧米中心主義的な傾向が感じられるかなと。まあ、この手のスパイものはたいていそうだけど。

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