ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

償いの雪が降る アレン・エスケンス

 「たとえ天が~」が良かったのでこれも読んでみた。主人公のジョーは、大学の授業の課題で年長者の伝記を書くことになり、介護施設に行ったところ、末期癌のカールを紹介される。彼は30年前に殺人事件で有罪判決を受けて服役していたけれど、癌で余命わずかとなり介護施設に移されていた。ジョーはカールに話を聞くうちに、冤罪だったのでないかと思うようになり、当時の事件を調べ始める・・というストーリー。

 何と言っても主役のジョーのキャラクターが良い。家族は躁鬱病育児放棄の母親と自閉症の弟という恵まれない境遇にもかかわらず前向きで、アルバイトをしてこつこつ貯めたお金で大学に通っている苦学生。若さゆえに衝動で突っ走ってしまうところが少々危なっかしいけれど、隣に住む女子大生のライラを想う気持ちが素敵だったし、自閉症の弟を気遣う兄弟愛も感動的で、青春小説のような爽やかさも感じられるストーリーがとても良かった。幼い頃亡くなった祖父にカールを重ね合わせ、冤罪を証明しようと奔走するジョーを応援せずにいられない。カールはベトナム戦争の帰還兵で、彼の戦場での壮絶な体験には胸を揺さぶられるものがあって引き込まれた。これは泣けるわ。こういうエモいミステリーが好きなのよ。

 でも2作目を先に読んでいるので比べると「たとえ天が~」のほうが良かったかな。私が法廷ものが好きだからということもあるけど、デビュー作より完成度が高いと思う。

 

 昔、大学生の時に一般教養で法学の授業を取っていて、「12人の怒れる男」という映画を見てアメリカの陪審制度について書くという課題が出たのよね。陪審員が話し合っている場面を延々と描いた地味な映画なんだけど、名作と言われているだけあって面白かった。それまでも法廷ものの映画やドラマは見ていたのだけれど、あまり深く考えずに漫然と見ていたから、細かいことはよくわかっていなかったと思う。レポートを書いたことで知識が深まり、アメリカの裁判制度について興味が沸いて、法廷ものの小説を読んでみようと思い立ち、当時はジョン・グリシャムの全盛期だったから何冊か読んだ覚えがある。思えばそれが法廷ものの小説が好きになるきっかけだった。大学のレポートも侮れないよねえ。

 

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