ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

過ちの雨が止む アレン・エスケンス

 A・エスケンスの最新作。「償いの雪~」では大学生だったジョーが、本作では社会人になってAP通信の記者をしている。自分と同姓同名の男の不審死を知り、もしかしたら実の父かもしれないと、事件が起きた田舎町へ向かう。

 ジョーの実の父だと思われる男は町中の人から嫌われていて誰に殺されてもおかしくないろくでなしだった。殺害の裏にはもつれた人間関係や相続の問題があり、かなり複雑な事件で面白かった。でも途中から事件を解明する動機が金銭絡みになってしまって、「償い~」の時ほどはジョーに共感できなかったなあ。ガールフレンドのライラとの仲が拗れてしまったのも自業自得だし、中盤はジョーのことが嫌いになりかけたけど、素直に自分の過ちを認め最終的に正しい決断をしたのは立派で、悩みながら成長するジョーがとても良かった。完璧な人間ではなく、間違ったことをして自己嫌悪に陥ったりもするリアルな若者像を上手く書いていると思う。まあ、毎回鋭すぎる推理で真犯人を見つけたり、死にそうな目に遭いながらも危機を乗り越えたりするところはアクションヒーローみたいだけど。自閉症の弟の後見を母親と争った顛末や、ライラの過去等、事件以外にも読みどころ満載で、紆余曲折の末の母親との和解は感動的だった。A・エスケンスは今のところハズレなしだわ。

 この作家は原書の刊行順に全部翻訳されているわけではなく、1作目、3作目、5作目の順で翻訳が出ているけど、次はどの作品が翻訳されるのかな。「たとえ天が墜ちようとも」の刑事マックスの奥さんの轢き逃げ事件が気になっているので、未訳の4作目”The Deep Dark Descending"を出してくれると嬉しいんだけど。

 

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