「スケアクロウ」の事件から10年後くらいのお話。ジャックは前作でレイチェルとよりを戻していたので、てっきり2人で仲良くやっているかと思ったら、未だ独り身で、ニュースサイトの記者になって収入も減少し侘しい生活をしている。どうやらジャックが彼女よりも記事を優先させたせいでレイチェルはFBIをクビになってキャリアを断たれ、2人の関係も終わってしまったらしい。ジャックってば、しくじったのね。まあ、幸せいっぱいのマイホームパパになってたりしたら逆に驚くけどさ。ハードボイルドなミステリーの主人公は哀愁漂ってないといけないから満たされてたらダメってことね。
DNA鑑定で身内を探すというのは、最近ミステリーでよく出てくるネタだけど、それを悪用する犯罪者がいるというのが恐ろしい。そういうDNA鑑定会社のセキュリティの問題にまで踏み込んで書いているところが流石だわ。コナリーは元ジャーナリストだけあって切り口が鋭いわね。巻き込まれ男のジャックは警察に容疑をかけられ、捜査妨害で拘置され、今回も大変な目に遭いながら、レイチェルに協力を仰いで連続殺人犯の正体を暴こうとする。色々と興味深いテーマを取り入れたストーリーが面白かったし、サスペンスの盛り上げ方も見事でベストセラー作家だけのことはある。ただ、DRD4遺伝子を持つ女性がみんなふしだらだというのは、そういう性質って環境要因も大きいと思うし、そんなに単純ではないと思うけど。
ジャックはこれからはレイチェルと協力してポッドキャスト探偵(?)になる勢いで、続きがあるような感じで終わっていたけど、どうなのかしら。マイクル・コナリーの主人公はみんな年を食いすぎているので、個人的にはもう少し若い男性を主役に書いてほしいわ。