Scndal & Scoudrel シリーズ3作目。このヒーローは「不埒な侯爵と甘い旅路を」でヒロインの妹に池に突き落とされていた公爵で、浮気者の最低男として描かれていたので、主役となった本作でどう挽回するのか興味津々。既刊で嫌な奴だったほど改心するインパクトが大きくて面白いわよね。これから読もうという方は、事前に「不埒な侯爵~」を復習しておくといいかも。
公爵のマルコムと結婚後、仲違いして出奔し音信不通だったヒロインのセラが、2年7か月ぶりにイギリスに戻ってきて、議会に離婚を嘆願するところからストーリーが始まる。夫婦が壊れてしまった関係を修復する話は好きだけど、最初のうちは2人が仲違いした経緯がよくわからなくて、ちょっと話に入り込みにくかったかな。読み進むうちに過去が明らかになり、愛しているのに傷つけ合ってしまった2人のストーリーに引き込まれていった。以下ネタバレ注意
セラは成金の父親が爵位をお金で買って貴族の仲間入りをしたことで、社交界から蔑まれていた。公爵のマルコムは美人で闊達な彼女に惚れ込み、相思相愛だったにもかかわらず、セラは自分の身分では公爵とは結婚できないのではと心配になり、母親の策略に乗って彼を罠にかけ結婚を強制してしまう。マルコムは彼女が自分を愛していたのではなく公爵夫人になりたかっただけだと思い込み、結婚はしたけれど彼女につらくあたり、セラはイギリスから逃げ出しアメリカへ渡って消息不明になっていたらしい。
お互いに相手のことを忘れられずに辛い日々を過ごしてきた二人が泣ける。猛省し、彼女を取り戻そうと必死になっているマルコムが良かった。それでも一緒に過ごす口実とは言え、離婚したいなら再婚相手を選んでくれと、後妻候補の女性達を屋敷に招待してセラに選ばせるのはちょっと悪趣味だと思った。そこはもっとストレートにアプローチしてほしかったわ。セラも変わり者の妹たちを4人も引き連れて屋敷にやって来て、みんな個性的で面白いとは思うけど、かしましすぎてちょっと煩わしかったかも。S・マクリーンは元々しっとり系のロマンスを書く作家じゃないけれど、本作はテーマが割とシリアスなので、もう少し落ち着いた雰囲気にしても良かったんじゃないかなと。そういう多少の文句はあるけれど、過去を乗り越えた二人の愛の再生の物語が感動的で良かったし、2人の関係をギリシア神話になぞらえているところもセンスあると思う。ハッピーすぎるハッピーエンドにも癒された。次のシリーズも是非翻訳を出してほしいな。
これを読んで、シェリー・トマスの「もう一度恋をしたくて」を思い出した。同じような設定のストーリーで面白かった覚えがある。(読んだのがかなり前なので記憶が曖昧だけど。)設定は似ていても作風は全然違うので読み比べてみるのも面白いんじゃないかな。