原題は"The Psychology of Time Travel"で、タイムトラベラーの心理に焦点を当てた異色のストーリー。可愛らしい日本語タイトルは内容と合っておらず、鬱屈とした雰囲気のタイムトラベルSF+殺人ミステリーだった。
色んなテーマが盛り込まれていて登場人物も多めの割に、わかりやすく書かれていて読み難さは感じなかったけれど、キャラクターの魅力に乏しく誰にも共感できなかったのが残念。タイムトラベラーが心を病んでしまうというのはわかるけど、人格が歪んだ登場人物ばかり出てきて、タイムトラベルの悪い面に的を絞って書かれているので、読んでいて爽快感はない。主要な登場人物が女性ばかりでレズビアンも何人か出てくるけど、ジェンダーの面で特別はっきりした主張はないように思うし、結末もいまひとつスッキリせず、盛り込んだテーマを消化しきれていないような印象はある。それでも普通のタイムトラベルものとは一味違うストーリーで、殺人の謎解きは面白かったし、注目に値する作品ではあると思う。SFよりもミステリー好きな人のほうが楽しめるんじゃないかな。